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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章
「って事で――。今、俺らが出来る事は、何でしょう? クリス――?」
羽生にいきなり名指しされたクリスは、それでもすぐに答えを口にする。
「今シーズンの世界選手権で、五輪の3枠、を勝ち取ること……」
2020-2021シーズンの世界選手権の結果で、2021-2022シーズンの五輪と世界選手権の出場枠が決まる。
各国の上限は、最大3名/種目まで。
来年の3月に行われる世界選手権で、男子・女子シングルは何が何でも、3枠を勝ち取らなければならない。
それが団体戦銀メダルへの、一番の近道となる。
「そう。クリスの言う通り。まあ、アイスダンスかペアか、どちらかの五輪 “個人戦” への出場も必須だけれど。それについては、俺はあまり心配していない」
羽生のその言葉に、「ヴィヴィも!」とすぐに反応したのに続き、クリスと宮平も頷いた。
「今出来る事を、互いに必死にやる……。そして、世界選手権では協力し合って、皆で台乗り、しよう?」
宮平の思いに、皆が頷き。
休憩時間も終わりに近づいて来た頃、最後に羽生が重要な情報を提示してきた。
「合宿の最終日に発表になると思うけれど、五輪シーズンの来年の8月末……。1週間ほど、五輪開催地での “特別強化選手の合宿” が予定されているらしい……」
いつもはこの中京大学で行われている、特別強化選手の合宿が、来年は五輪開催地で行われるかもしれない、とは。
それだけスケ連も、我々にメダルを期待してくれているのだろう。
「え……? ドイツの、ミュンヘンで……?」
クリスの呟きに、唇の前に人差し指を立て、静かに頷く羽生。
「うん。まあ、あくまでも “予定” だけれどね――」
その時、「集合して~!」と声が掛り、話はそこで終わりになった。
※2015年のIOC総会で、2020年冬季五輪の開催都市が決定します。
本作では勝手に、ドイツのミュンヘンにしてやりました。