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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章
「あ、みんな、ここにいたんだ?」
両親と匠海が、ラウンジの一角で(日本時間では朝っぱらから)シャンパンを飲んでおり。
呆れた表情を浮かべる双子に対して、両親は「「朝シャンだよ、朝シャン!」」と、どうでもいい事を主張してきた。
「おはよう、クリス、ヴィヴィ。よく寝むれたか?」
ポロシャツとデニムというラフな格好の匠海が、そう言いながら双子を見比べ。
挨拶を交わした双子は、アラビックコーヒーを頂いたのだが。
「うっ に、苦……っ」
小さなカップに注がれた、黄褐色で癖のある独特のコーヒーは、ひと口で飲み干せるほどの量。
香辛料の香りと味が強く、コーヒー豆の存在を全くといっていいほど感じさせない、苦い飲み物だった。
クルーに尋ねると、コーヒー豆が緑色をとどめる程度に浅く炒り、緑のカルダモンと1時間程度煮詰めて作るらしい。
双子の可愛らしい顔が、何とも言えない表情に歪んでいるのに、両親と匠海は吹き出し。
結局、普通の紅茶で口直しをしながら、デーツ(ナツメヤシの実)を摘んで皆と話した。
それでも暇で暇でしょうがない双子は、持参した本を読み、個室で映画鑑賞し。
最後にはiPadを持ち出して、即席アラビア語講座を開いて楽しんだのだった。
やっとドバイ空港に到着したのが同日の朝8:05。(日本との時差 -5時間)
「あっぢ~~っ」
入国審査等を終え、航空会社のリムジンに乗り込もうとターミナルビルを出た途端、ヴィヴィの細い躰を熱風が包み込んだ。
驚くなかれ。
ドバイの8月 最高気温は41℃。
日中平均気温は35℃。
最低気温は30℃。
1年の中で一番暑い時期なのだ。
「まあ、移動は車かモノレールだし。室内はあほみたいにクーラー効いてるし。死にはしないわよ」
母のその言葉に、双子は「「ホントかな~……」」と疑いながらも信じるしかなかった。
空港からホテルへと向かう車中、双子はアラビア語の復習をしていた。
「私 は アナ」
「貴方 は アンタ……。貴女 は アンティ……」
指差しながら確認しあう双子に、匠海は微笑ましいものを見るように瞳を細めていた、が。