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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章           

「ん……? どこ行くんだ?」

 2つ上の母方の従兄・ジョンが、ワイン片手に驚いて聞いてくる。

「えっと、リンクに行ってくる」

 へらっと笑ってそう返したヴィヴィと、キャスター付きのスーツケースを視線で指し示したクリス。

「あ~、だからそんなに大荷物だったんだな?」

 父方の従兄・ヒューの言葉に頷いた双子は、皆に挨拶してレストランを後にした。

 一応、コーチである母が双子を追って来て、このドバイ・モール内にあるスケートリンクへと一緒に向かった。

 実はこのドバイ・モール、水族館に映画館、キッザニア、セガの屋内遊園地があり。

 そして、オリンピック規格をクリアしたリンクまであった。

 20:30にチェックインした双子は、しっかりストレッチして一般営業が終わるのを待ち。

「じゃ、後はガンバレ! 私は呑むっ」

 そう言い置きレストランへ戻っていく母と、苦笑して別れ。

 21:00~24:00迄の3時間、リンクを貸し切って2人だけで自主練したのだった。





 8月13日(金)、ドバイ滞在2日目。

 たったの3時間睡眠で起床したヴィヴィは、さすがの寝ぼけまなこだった。

 4時に起こしてくれるよう頼んでおいたバトラーに礼を言い、フラフラしながら向かったのは、兄2人の寝ているベッドルーム。

 自分のコネクティングルームから、ダイニングとリビングを通り、三角形のロビーを通り、両親の寝ている寝室を横目に突き進めば、やっと目的のそこに辿り着く。

 ベッドサイドのランプ1つだけ灯された広すぎる寝室には、シングルベッドで寝ている匠海とクリスがいた。

 ヴィヴィは手前のベッドでくの字になっている双子の兄のベッドに「うんしょっ」と言いながらよじ登り。

 迷う事無く両手でむんずと、その脇腹を力強く掴む。

 一瞬びくりと震えた細身の長身が、また何事も無かった様に惰眠を貪り始める。

 何度かそれを繰り返すものの、クリスは目蓋さえ上げてくれなくて。

「お~き~てぇ~っ お願いだからっ!!」

 と小声でその耳元で喚いた。

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