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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章
10:30からの一般営業の為に、製氷車でリンクが美しく整えられる中、ストレッチを終えた双子は受付に挨拶をしに行く。
「君達、イギリス人?」
美しいクイーンズ・イングリッシュでそう思ったのか、初めて会う受付の男性スタッフに尋ねられ、
「あ、いいえ。一応、日本人です」
どこからどう見ても、金髪灰眼の双子は日本人には見えないだろうなと苦笑しながら、ヴィヴィはそう答える。
「へえ。スケート、凄く上手だね? 今日からでも、ここでレッスンして欲しいくらいだ」
にっこりと微笑んだスタッフの言葉に、双子は顔を見合わせる。
ドバイでは冬のオリンピック放送がほとんどされず、フィギュアの試合を観る国民も少ない。
だから、五輪金メダリストの双子を知る人間は、ほぼいないらしい。
「ありがとう、ございます……」
「ありがとう!」
同時にそうお礼を言った双子は、見つめ合って笑った。
「ふふ。なんか、今……。素直に、嬉しかった……」
「僕も……」
日本語でそう言い合った2人は、タクシー乗り場へ向かって、スーツケースを引きながら歩き始める。
フィギュアスケートが盛んな欧米・アジアでは、双子を知らない人間はほとんどおらず。
ましてや、手放しで「スケート、上手だね?」と褒められる事なんで、ここ数年無かった。
『4回転、確率、はんぱないな?』
『エッジの使い方が、本当に教科書通りに素晴らしい』
そういう褒め方をされる事はあっても。
だから素直に嬉しくて、各々のショップが開店準備を始めるモールを歩きながら、ヴィヴィはにんまりしたのだった。
タクシーでホテルへ戻った双子は、軽くシャワーを浴び、速攻プールへと繰り出した。
今日はホテルに併設しているウォーターパーク、「アクアベンチャー」で遊ぶのだ。
日焼け止めをしこたま塗ったヴィヴィは、すでに遊んでいた従姉妹達と合流し。
27mもの高さから滑り落ちる、ウォータースライダーへと向かった。
マヤ遺跡の階段状ピラミッドに作られた滑り台は、なんとサメが大量に泳いでいるプールへと続いている。
といっても、サメプールの中を透明なチューブ(トンネル)が走っているのだが。