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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章           

 ワクワクしながらその順番を待っていると、目の前に立っていた従弟のジムがくるりと振り返った。

 くりくりの瞳で、一緒にいた従姉のサラ(彼の姉)と、ヴィヴィとを何度も何度も見比べるジム。

「なあに? どうしたの?」

(トイレ、かな……?)

 少し屈んで11歳の彼の顔を覗き込むと、ジムはヴィヴィの胸元をじっと見つめて口を開いた。

「ヴィヴィ、可愛いね」

「……え……?」

 一瞬、意味が分からずそう聞き直したヴィヴィに、

「うん。ヴィヴィ、可愛いっ」

 にっこりと満面の笑みを浮かべて、ヴィヴィの胸元と顔を見つめてくるジム。

「………………」

 その場で固まってしまったヴィヴィに、ジムは不思議そうに首を傾げたが、係員に「君の番だよ~」と呼ばれて、スライダーで滑って行ってしまった。

「ヴィ、ヴィヴィ……。その、えっと。悪気は無いんだよ? まだ、11歳(小学5年生)だし……」

「……うん。わ、分かってる……。あははっ」

 サラが自分の弟の落とし前を付けようと、恐るおそるフォローを入れて来るのに、ヴィヴィは乾いた笑いを零しながら頷き。 

「次の方、どうぞ~」

 その係員の誘導に、ヴィヴィはサラの背を押して先に行かせた。

 キャーキャー怖がりながら中々、滑り落ちる勇気の出ないサラの胸は、同い年とは思えないほど豊満で。

 一方、自分の胸を見下ろしたヴィヴィは、薄い唇をへの字に曲げた。

(胸が、可愛い……。サラと比べて、可愛い……。……OMG……orz)

 生ける屍と化したヴィヴィは、係員の誘導に従って、のろのろとスライダーに寝そべり。

 70度と直滑降に近い傾斜にも少しも怯む事無く、異常なほど静かに、27mのスライダーを落ちて行ったのだった。

 虚ろな瞳でサメプールを通り抜けたヴィヴィは、全身ずぶ濡れでスライダーから降り。

 とぼとぼと、両親のいる筈のプライベート・カバナへと歩いて行く。

 白い三角屋根のテントのひさしには、父と匠海がおり、その真ん中には水タバコが置かれていた。

「ヴィヴィ? どうした?」

 娘の元気無さそうな様子に、グレコリーはそう尋ねて寄越したが。

「……何でもないでしゅ……」

 語尾を噛んだにも関わらず、訂正もしないヴィヴィは、奥のベッドに突っ伏した。

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