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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章
「ヴィヴィ……? 疲れたか?」
傍に寄って来る足音と共に掛けられたのは、匠海の気遣わし気な声。
「…………ううん」
双子が3時間睡眠でリンクへ行ってしまったので、兄はその事が心配らしく、ベッドに腰を下ろすと妹の濡れた髪を撫でてきた。
「大丈夫……。ただ、凹んでるだけ、だからぁ~~っ(-_-、)」
ヴィヴィはそう言ったのに、それから根掘り葉掘り、あの手この手で妹のご機嫌斜めな理由を聞き出そうとしてくる匠海。
結局、ヴィヴィは「実は……」と、もそもそと理由を喋り――。
「ふはっ そんな事で、凹んでたのか。あはははっ」
何故か爆笑した匠海を、ヴィヴィはベッドに突っ伏していた顔を上げてぎろりと睨んだ。
「そんな事って! ヴィヴィ、もう、立ち直れないっ 豊胸手術してやるぅ~~っ!!」
けれど、目の前の匠海はにやりと笑い、首を振る。
「それは駄目。俺、ヴィクトリアの可愛いおっぱい、大好きだからね」
兄のまさかの返しに、ヴィヴィの灰色の瞳が、瞬時に限界まで開かれる。
「―――っ!? な……にっっ」
(ダ、ダッドがそこにいるのに、何言って……っっ!? って……、あれ、いない……?)
先程まで傍にいた筈の父の姿は、いつの間にか無くなっていた。
「ヴィクトリア。こっちおいで?」
細い二の腕を優しく掴まれて、ヴィヴィはしょぼくれた表情のまま、父が座っていたサマーベッドへと連れて行かれた。
「これ、吸ってごらん? シーシャて言うんだ。ミントフレーバーだから、すっきりするぞ」
隣のサマーベッドに腰掛けた匠海に差し出されたのは、水タバコに繋がれたマウスピース。
「……え……? でも、タバコでしょう?」
水タバコ――と言えば聞こえはいいが、これもタバコの一種の筈。
未成年のヴィヴィは吸ってはいけないし、アスリートなので吸うつもりもさらさら無いのだが。
「ああ、普通の水タバコはニコチンやタールが含まれているけれど、これは一切入っていないよ」
兄の説明におずおずと、マウスピースに繋がれたホースを受け取る。