この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第28章
11月3週目にはNHK杯が、12月2週目にはロシアでのグランプリファイナル、12月4週目には全日本選手権と試合が立て込んでいた。
(とにかく、怪我しないようにしないと……それで、絶対にオリンピックで一番になるんだ……)
そうだ。自分は匠海と約束した。オリンピックの金メダルを取って、兄に願いを叶えてもらうと――。
「………………」
(代表に選出されることが……オリンピックに出ることが目的ではない……そこでどういう結果が残せるかが、本当の目的――)
思いつめたようにi-Padをぎゅっと胸に抱きしめると、車はリンクへと到着した。
牧野マネージャーが「まずテレビ朝日の10分インタビューがあるから」と言葉少なに双子に言い渡すと、双子は制服に不備がないかさっと確認し、開かれたミーティングルームの扉から中へと入る。
「失礼しま…………すっ!?」
先に中へと入ったヴィヴィは、なぜか素っ頓狂な第一声を発してその場に固まった。不思議に思ったクリスがヴィヴィの視線の先にいる人物を見て、妹の様子に納得する。
テレビカメラ等の機材で雑然とした部屋の中心に立っていたのは、ヴィヴィの長年の憧れのスケーター――浅田真緒だった。
「OMG……」
思わず漏らした呟きに、浅田の表情が綻ぶ。
「あは。やっぱり、ハーフだね」
ヴィヴィはクウォーターだが、そんなことは気にもならない。本来人見知りのヴィヴィだが、小走りに浅田の前へと近寄るとぺこりと頭を下げた。
「は、初めまして、ヴィクトリア篠宮です! あ、あ……」
「あ……?」
不思議そうに浅田が首を捻る。
「貴女の大ファンです~~っ!!」
がしっと浅田の手を両手で握りしめて、ヴィヴィは潤んだ瞳で告白した。
「うわぁ……ありがとう」
若干引き気味の浅田から、冷静なクリスがヴィヴィを引き離した。
「すみません……兄のクリスです」
その後、優しい浅田は「同じトリプルアクセルジャンパーのヴィヴィが日本にいてくれて嬉しい」と、ヴィヴィが舞い上がりそうな事を言ってくれ、10分のインタビューはあっという間に終了の運びとなった。
「さ、最後に、握手と……写真撮ってもいいですか!?」