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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第28章                             
 ファン根性丸出しでそう言ったヴィヴィに「一緒に写真撮ろう?」と申し出てくれた浅田に、ヴィヴィは涙目で写真に納まり、お互いのブログに写真をアップすることを約束し合って終了となった。

「ふぁあああぁ~~。可愛かったな~~……」

 ストレッチをしながらもいまだ興奮の冷めやらぬヴィヴィの様子に、クリスが口を開く。

「ヴィヴィ……上の空になってると、怪我するよ?」

「はっ! ……そうだね……そろそろ落ち着こう……」

 ヴィヴィはそう言って深呼吸をすると、気合を入れて立ち上がった。






 グランプリシリーズ――NHK杯は、ここ数年の中で一番の盛り上がりを見せた。国内選手権が熾烈な争いを見せるであろうロシアに比べればそうでもないだろうが、日本には15歳の双子を筆頭に、

 男子は、羽生(はぶ)結弦、田内刑事、火野龍樹の24歳コンビ。

 女子は、村下佳菜子(24)、宮平知子(20)、本田真凛(17)。

 それぞれがしのぎを削っている状態だった。

 いつもは仲の良い日本人選手たちが各々静かな闘志を漲らせる中で、双子は手堅い演技でNHK杯の頂点に立った。スケートアメリカとNHK杯で一位に輝いた双子は、その時点でグランプリファイナルへの出場資格を手にした。

 男子は中国杯で金メダルの羽生とロシア・ロステレコム杯で銀メダルの火野が、女子は中国杯で金メダルの村下がグランプリ・ファイナルへの進出を確定させた。

 試合後のロッカールームの隅で、グランプリファイナルへの切符を逃してしまった宮平が涙を拭っているのを、ヴィヴィは目にしてしまった。いつも気丈な彼女の涙に掛ける言葉も思い浮かばず、ぼうと突っ立っていたヴィヴィに宮平のほうが気づいて視線を上げた。

「知子(さとこ)ちゃん……」

「…………絶対、全日本で台乗りするから……」

 悔し涙を袖でぐいと拭った宮平に、ヴィヴィは歩み寄り自分より背の低い宮平に抱き着いた。国別対抗戦がシニア初参戦だったヴィヴィを、宮平はまるで自分のことのように気にかけてくれた。それでどれだけあの時の自分が救われたか。そんな彼女を、今は自分が未来へと導きたい。

「一緒に、行こう……ね……?」

「ヴィヴィ……」

 腕の中の小さな宮平は、そう呟くとぎゅっとヴィヴィの腰にしがみ付き「一緒に戦いたい」と強い声で返してくれた。




 
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