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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章
すぐ近くの壁に押し付けられたヴィヴィを、まるで「逃がすものか」とでもいう風に、匠海が長い両腕で囲ってくる。
きょとんとするヴィヴィに、兄はその端正な顔をゆっくりと近付けて来た。
「……――っ」
それで無くてもアバヤで狭まった視界いっぱいに、匠海だけが映し出されていて。
まるで睨み付ける様に上から見つめられて、ヴィヴィの背筋が恐怖と紙一重の何かを感じ取り、ぞくりと震える。
(おにい、ちゃん……?)
ゆっくりと布越しに触れ合わされる唇。
薄い生地越しでも、張りのある感触は分かって。
久しぶりに感じる兄の唇に、ぴくりと震えたヴィヴィから唇を離した匠海は、そのまま首筋に顔を埋めてきた。
「はぁ……。ヴィクトリアの香りだ」
シャワーを浴びたばかりとはいえ「あっ やん……っ」と恥ずかしがるヴィヴィを、匠海は愛おしそうにその胸の中に抱き込んでくれた。
薄手のⅤネックシャツを纏った匠海の首筋から香る、兄の香りに促される様に、ヴィヴィもきゅうと兄に抱き着く。
「ずっと、こうしたかった……。ヴィクトリア……」
兄のその独白に、ヴィヴィもこくこくと頷いて同意する。
屋敷に居る時は、毎夜こうしで互いを確かめ合っている2人。
こんなに傍に居るのに、添い寝さえ出来ない状況はやはり寂しくて。
細い腰をひょいと絡め捕った匠海は、ヴィヴィのお尻の下に腕を通し、そのまま部屋の中へと入って行った。
ダブルベッドとソファーセットのある、一般的な客室。
ベッドの前で止まった匠海は、ヴィヴィを見上げて苦笑する。
「そろそろ、顔、見せてくれてもいいんじゃないか?」
兄のその指摘に、部屋に入ってもずっと瞳から下を隠していた事に気付き、片手でアバヤのボタンを外し。
露わになった小さな顔に、嬉しそうに微笑んだ匠海の頬を、ヴィヴィは細い両掌で包みこむ。
抱き上げられたまま、ちゅっと口付けを落とし。
薄い唇を跳ね返す兄の張りのある唇の触感に、ヴィヴィはこの世の幸せを独り占めしたかの様な、蕩けた表情で見下ろした。
「もう1回」
可愛らしいキスを再度強請る兄の様子は、なんだか甘えている様で。
ふわりと微笑んだヴィヴィは、両掌の中の匠海にまた唇を押し当てた。