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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第28章                             

 グランプリファイナル四日目。ロシア――ソチ。

 ヴィヴィとクリスの周りには、世界各国の報道陣が取り囲んでいた。正直、双子が今季シニアに参戦してくる前までは、来年のオリンピックは層の厚いロシア勢が断然有利だと言われていたのだ。それがいきなりジュニアからポッと出てきた15歳の子供――しかも、双子――がこれまでの国際試合を総なめにしてきたのだから、その注目の大きさは半端なかった。

「Presence of mind(平常心)?」

「Of mind(平常心)」

 二人はリンクやホテルで顔を合わす度に、そう確かめ合う。ヴィヴィはクリスのSPに、クリスはヴィヴィのSPにそれぞれ立ち会った。以前の試合の際、ヴィヴィは滑走直前にクリスの手を握ると、ふっと肩の力が抜けて楽に感じたのだ。クリスもそう思ってくれているようで、二人の間ではできる限りお互いのリンクサイドに付くことが暗黙の了解のようになっていた。

 クリスはSPもFPも一位の、総合一位に。

 ヴィヴィはSPを一位で通過し、ISU(国際スケート連盟)の公式記者会見に臨んでいた。一位のヴィヴィの両隣には二位のロシア――ユリア・リプニツカ、三位の中国――リ・ジュンリが着席し、それぞれ各国の記者の質問に答えていく。

「Ms.篠宮。Ms.浅田以来のトリプルアクセル保持者として、プレッシャーはありませんか?」

 イタリアの記者が流暢な英語でヴィヴィに質問する。

「プレッシャーはありません。アクセルは自分が一番好きなジャンプ。クリーンに降りられれば、モチベーションも上がってプログラムの質の向上にも繋がっていると思っています」

 ヴィヴィは最近慣れてきた記者への対応を、そつなく熟していく。

「逆に失敗すれば大きな取りこぼしもあり得る、両刃の剣との意見もありますが?」

 韓国の記者がそう続ける。

「確かに。しかし今までアクセルを失敗したことのない私には、回避する理由も見つかりません」

 冷静にそう答えたヴィヴィに、ロシアの記者が手を挙げる。

「SPは和楽器を使っていますがジャッジの評価が高い一方、日本の血が1/4しか入っていない貴女が日本におもねっているのではとの意見もありますが?」

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