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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章
「ん~と、水族館と、セガのアミューズメントパーク。映画館に……。あ、すぐ近くに、バージュ・カリファがあるって」
ドバイ・モールの案内表示を見ながらヴィヴィがそう呟けば、高所恐怖症のクリスはびくっと震え上がる。
「バージュ・カリファ、はパス……」
地上828mを誇る世界一高いそのビルは、彼にはハードルが高過ぎるらしかった。
「じゃあ、キッザニアでも、行く?」
キッザニア――就学前~小学生の子供対象の職業体験型テーマパーク。
そこに行こうかと提案したヴィヴィは、もちろん冗談でそう発したのだが。
「いいね……。ヴィヴィが、エミレーツ航空の “フライトアテンダントごっこ” してるの……。僕、いっぱい、写真撮ってあげる……」
クリスに真顔でそう返され、ヴィヴィは金色の頭を抱えたのだった。
結局、モール内にあるスーク(市場)を冷やかし、日本のラーメン屋でランチを採り。
13時になってモールの外に出れば、「ザ・ドバイファウンテン」という150mの高さを誇る噴水ショーを楽しんだ。
昼からは、セガのアミューズメントパークにチェックインした双子。
それぞれスピード狂という共通点から、屋内ジェットコースターにはまって、馬鹿みたいに何度もリピート乗車したのだった。
「わ~っ これがドリフト? 楽し~いっ!!」
実物大のレーシングカーに乗るアトラクションで、きゃっきゃ喜ぶヴィヴィは、本当に心から楽しんでいた。
日本ではすっかり有名人となってしまった双子は、人の多い場所へ行くのは中々気が引けてしまって。
人目も気にせずクリスと思う存分遊ぶなんて、夢のまた夢だった。
隣のレーシングカーを操縦するクリスも、灰色の瞳を生き生きと輝かせていて。
(良かった……)
ほっとしたヴィヴィは、クリスの腕を引いてあちこち連れ回した。
疲れたら、キャメルミルク(ラクダの乳)アイスやサフランアイスといった、ドバイならではのスイーツを食べさせ合いっこしたり。
お化け屋敷が大の苦手のヴィヴィが、恐怖の館で目を瞑ったままクリスに先導されたり。