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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章           

 ラスト、主題の提示をすれば、曲は可愛らしい響きを持ち始める。

 バレエでは、いい感じのバレリーナ(ヴィヴィ)とムーア人、にやきもちを焼いたペトルーシュカ(クリス)が、棒を振り回してムーア人を追い駆け回し。

 魔術師の魔法で無理やり操られた3体が、横一列で手を繋ぎながら、滑稽に同じ動作で踊らされる場面だ。

 右脚、左脚と揃って足を振り上げ、ぴょんぴょんその場で飛び跳ねたかと思えば。

 曲の終了と共に魔法が切れ、藁人形の3体はその場に崩れ落ち、動かなくなる。

 THE ICEのアンコールでも演じたその場面を思い出したヴィヴィは、ふっと唇の端で笑いながら弾き熟し。

 最後、fff(フォルティッシッシモ)の和音を弾き切ったヴィヴィは、「私、やったわっ!」とでも言わんばかりに、右腕を左上へと振り抜いてフィニッシュした。

 その派手なパフォーマンスに、リストランテのフロアからは「「「おおぉ~~っ!!」」」と地響きがしそうな、重低音の歓声が沸き起こり。

 いつの間にかリストランテの外にも、ホテルの客が「なんか面白そうな事、やってるぞ?」と、5名ほど覗き込んでいた。

「あ゛……」

 明らかにやり過ぎた感を肌で感じ取ったヴィヴィは、傍に立って見守っていたクリスを見上げ。

 双子の兄の肩を竦めたその様子に、「やっちゃった」っと舌を出して見せたのだった。



 「凄く上手だった! もう一曲弾いてくれっ」とのシェフの申し出を、「開店準備の邪魔になるから」と丁重に断り。

 ピアノを使わせて貰ったお礼を平身低頭で述べたヴィヴィは、クリスの腕を引き、逃げる様にリストランテを後にした。

 当初の目的の砂浜のお散歩へ向かった双子は、手を繋いで波打ち際を裸足で歩いて行く。

「ヴィヴィ、可愛かった……」

 ぼそっと呟かれたそのクリスの言葉に、ヴィヴィは「え~~?」と疑わしそうな瞳を向ける。

「調子に乗りすぎちゃった……。おバカ丸出し……」

 持ち上げられるとどうも調子に乗ってしまうヴィヴィは、「とほほ……」と零す。

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