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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第107章
「……ヴィヴィ……」
そう妹の名を呼んだクリスは、何故か少し困ったような顔をしていて。
不思議そうに首を傾げたヴィヴィの手を強く握り締めたクリスは、その手を引いて自分の胸の中に妹を抱き込んだ。
「……クリス……?」
目の前に広がるピンク色のTシャツの胸に、ヴィヴィは少し驚いてその名を呼ぶ。
「こっちこそ、ありがとう……。特に今日は、ずっとこうして居たいくらい、楽しかった……」
そんな嬉しい返事を返してくれたクリスに、ヴィヴィはその胸の中でにっこりし。
けれど、現実に引き戻す事も忘れなかった。
「日本に帰ったら、また怒涛のスケジュールが、待ってるけどね?」
「あ゛ぁ……。しんどい事、思い出させないで……」
ぐったりした声でそう呻いたクリスは、抱擁を解き。
夕暮れに染まり始めた砂浜を、妹の手を引いて歩き出したのだった。
翌日、8月17日(火)。
9時半にドバイ空港を出発した飛行機は、9時間半のフライトののち。
翌18日(水)の深夜0時に羽田国際空港へと到着した――時差の関係で。
時差ボケで元気な双子は「「リンク行きたい」」と言い張ったが、両親と匠海に「馬鹿?」と一蹴されて叶わなかった。
その2日後、双子はフジテレビの湾岸スタジオにいた。
ジャニーズのあるグループの冠番組に、ゲスト出演が決まったからだ。
少し早めに到着してしまった双子は、控室で呼ばれるのを待つ。
「メイク室に行く時間まで、まだある」との牧野マネージャーの言葉に、ヴィヴィはiPadで本日の通し練習を見直していた。
しかし、真剣に画面を見つめていた灰色の瞳が、数分後にはぼんやりしたものになり。
目の前の動画に視線を向けながらも、ヴィヴィの思考は別の所にあった。