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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第28章                             

 日本に帰国すると、羽田空港には信じられないほどの報道陣とファンが駆けつけていた。なぜかその中には英国の国営放送BBCまで押しかけている。

(めんどく――いやいや! ……客寄せパンダだ!)

「お帰りなさい! 篠宮選手!」

「グランプリファイナルの初制覇、おめでとうございます!」

「メダルを持って写真を撮らせてくれませんか?」

 口々にそう言われ、同じ便で帰国していた羽生(はぶ)と村下も一緒に簡易の記者会見が行われることになった。

(もっと綺麗なカッコしておけばよかった……とほほ……)

 移動時に楽なようにとスリムなスウェットの上下を着ていたヴィヴィは、頬をぽりぽりと掻くと乱れていた金髪を指で梳いた。

「今回の結果には満足しています。アクセルも好調で、トリプル―トリプルもクリーンに下りられて良かったです」

 笑顔でそれぞれの質問に答えていたヴィヴィは、多くの記者たちの中に見知った顔を見つけ目を見開いた。

「おめでとうございます、篠宮選手。ISUでの会見の内容が、動画サイトを中心に世界各国で素晴らしいと評価されていますね?」

 そうマイクを通して口を開いたNHKの三田ディレクターに、ヴィヴィは笑みを深める。

「そうなんですか? 初耳です。自分としてはちゃっかりSPのテーマを売り込むことが出来たので、よい経験でした。Good comes out of evil. ええと……災い転じて、福となす……ですかね?」

 そう言って笑いながら首を傾げたヴィヴィに、周りから笑いが沸き起こった。羽生(はぶ)からも「頼もしい日本のエースです」とからかわれ、和やかにその場は終了した。

 篠宮邸に戻り爆睡した双子は夕食の時間には起床して、両親と匠海とディナーの席を囲んだ。使用人一同が集まり、口々に双子に祝福の言葉を掛けてくれる。それに心からの笑顔と感謝の言葉を返すと、両親から祝福のキスを送られた。もちろん、匠海からも――。

 ヴィヴィの華奢な両肩を大きな掌で軽く包んで、屈んで両頬にキスをしてくれる匠海。匠海の首筋から控えめな良い香りがして、ヴィヴィの心臓がどくりと波打つ。そんな当たり前の家族のスキンシップにさえ、ヴィヴィの心は浮き立った。

(全日本も、オリンピックも、優勝してキスしてもらうぞっ!!)

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