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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第28章
酷く低レベルなモチベーションで試合へのやる気を滾らせたヴィヴィを余所に、家族は和食に舌鼓をうつ。
「はぁ~……ずっとお刺身食べたかった……」
心の奥底からそう発したヴィヴィに、隣のクリスが深く相槌を打って同意する。
「試合が終わるまでは、当たるかも知れないから『なま物』厳禁だからね~」
そう返したジュリアンは、ロシアで双子の目の前で生牡蠣を旨そうに食べていたのだが――。双子に白い目で見られながらも、ジュリアンは一週間会えなかった父グレコリーにべったりだ。
ラブラブな両親を生暖かい目で見守りながら、ヴィヴィは真鯛のお刺身を頬張る。
(こりこりの歯ごたえに、滋味深いこの甘味……旨し……)
15歳の少女にしては渋い感想を心の中で述べていると、家令が銀の盆を手にジュリアンへと近づいていくのが目に入った。鈍く輝く銀盆の上には、メッセージカードが置かれている。
それを手に取り目を通したジュリアンが、さっと視線を双子に寄越した。
「やったわよ……!」
「「…………?」」
不敵な笑みを浮かべて立ち上がったジュリアンを、双子は不思議そうな瞳で見上げる。ジュリアンはナプキンで口元を拭うと、腰に片手を当ててメモを読み上げた。
「双子のJOCシンボルアスリートへの登録が内定。さらに、スポンサーへの名乗りを上げてきた企業が現時点で三社。さらに増える可能性があるとのこと――ですって」
そう読み上げてにっこりと微笑んだジュリアンに、家族や使用人は息を飲んだ。
「JOC……日本オリンピック委員会の、シンボルアスリートか……凄いな……」
匠海のその呟きに、ヴィヴィははっと我に返る。
「え……でも、ヴィヴィ達……」
「うん……まだオリンピック派遣、内定してないけれど……?」
心配そうにそう呟いたヴィヴィと、それに続いたクリス。
「内定したも同然よ! 貴方達はオリンピック派遣への三条件の一つ――GPファイナルの日本勢上位3人 を綺麗にクリアしているのだからね」
自信満々にそう言ったジュリアンに、父グレコリーも同意する。
「凄いな! 家からオリンピック選手が二人も誕生だ――っ!! お祝いだ、シャンパンを開けてくれ!」
使用人を急かせる気の早いグレコリーは無視しつつ、ヴィヴィの心は徐々に喜びでいっぱいになる。