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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第108章          

「初めまして。白砂 今(こん)です。身長180cm、脱いだら意外と凄い細マッチョ。現在 彼女募集中の24歳、です。よろしく!」

 満面の笑みを湛えながら右手を差し出してきた白砂と、ヴィヴィは瞳をぱちぱち瞬かせながら握手を交わす。

「…………、お兄ちゃんと、同い年」

 突っ込みどころは沢山あるのに、何故か一番にそこに喰い付いたヴィヴィなのだった。

 防音室のソファーセットで、茶を囲みながら聞いた話によると。

 国立(くにたち)音楽大学 演奏学科卒業後、ソロやグループとして活動し、国内外の有名アーティストのサポーターとしても参加しているらしい。

 実のところ、シニアに上がってからのヴィヴィは多忙の上、スケジュールがコロコロ変わることもあり。

 ピアノもヴァイオリンも「毎週○曜日の○時から」と、決まったスケジュールでレッスンを受けられなかった。

 ならば白砂の様に時間に余裕のある人間の方が、ヴィヴィにとって良いのではないか――と、勧められて。

(実際に音を聴いてみて、レッスンを受けてみないと何とも……)

 そう思ったヴィヴィだったが、白砂のレッスンを1時間受けた後には、

「ヴィヴィに……ううん。私にヴァイオリンを教えて下さいっ」

 こちらから懇願していたのだった。

 レッスン中に挟まれる、ちょっと軽薄なちゃかしは――まあ、置いておいて。

 その奏でる音は太く色気があり、レッスンは分かり易い言葉を選んだ丁寧なもの。

 そして、極めつけは、

「実は彼、ピアノも相当の腕前でね? 良ければ、ピアノ講師も出来るけれど?」

 年配の講師のその鶴の一声で、ヴィヴィは白砂を ピアノとヴァイオリンの講師とする事を即決したのであった。

(まあ、ピアノは、お兄ちゃんの音のほうが、ヴィヴィの好みだけどね……? うししっ)

 お金に余裕があるので、今迄両親に出して貰っていたレッスン代も自分で払う事にしたヴィヴィは、後日契約を交わす約束をして2人と別れた。


 


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