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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第108章
10月20日(水)の夜に、アメリカ デトロイト入りした双子は、翌日にはジョー・ルイス・アリーナでの公式練習に参加し。
10月22日(金)~24(日)。
グランプリシリーズ初戦となる、スケート・アメリカに参戦した。
前年度の成績如何により出場出来るかが決まる、このグランプリシリーズ。
シニア年齢に達した15歳から出続けている双子にとっては、今年で4回目となる。
金曜日、今季初となるSP『ペトルーシュカ』を披露したクリスは、アメリカの地で大喝采のスタンディングオベーションを受け、もちろん首位に立ち。
翌、土曜日の女子SPでも同じ『ペトルーシュカ』を披露したヴィヴィ。
クリスのプログラムとは全く正反対の “明るいけれど、どこか不気味” な世界観で、やはり圧倒的評価を受け、首位に立った。
そしてその夜。
クリスのリンクサイドに付いたヴィヴィは、FP『シャネル&ストラヴィンスキー』の世界を演じる双子の兄の姿に、釘付けになっていた。
シャネルのヘッド・デザイナー、カール=ラガーフィルドがデザインした衣装は、フィギュア界のみならず、ファッション界も席巻し。
いつもならあまり無い、ファッション誌からの取材要請も殺到した。
そしてクリスが用いたのは、ストラヴィンスキー作曲、バレエ音楽『春の祭典』。
待ち侘びた春の訪れに対し生贄を捧げる、古代の死の儀式がテーマのそれ。
その初演に起こったスキャンダラスな出来事は、今なおバレエファンには伝説として語り継がれている。
それを見事に映像化したこの映画を題材に用いるという事で、バレエ界からも注目されたクリスは、取材ラッシュで相当大変だったと思う。
まあヴィヴィはというと、 “シャネル” を演じるので、クリスほど注目もされなかったが――。