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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第28章
JOCのシンボルアスリートはヴィヴィの憧れの浅田真緒も務めてきていた――つまり「日本の顔」とも言えるシンボル的存在。
「ヴィヴィの会見での発言のお陰かもね」
匠海がそう発した言葉が気になり、ヴィヴィは視線を兄へと移す。
「日本でもさんざん取り上げられていたよ。ヴィヴィの素晴らしい切り返し。日本にも英国にも深い敬愛を見せたヴィヴィと、日本フィギュア界を盛り上げてくれているクリスだから、白羽の矢が立ったんだろうね?」
「………………っ」
(嬉しい……!)
双子を誇らしげに見つめてくる匠海に、ヴィヴィは感無量だった。隣のクリスと座ったままひしとハグをすると、立ち上がって向かいに座る匠海へと駆け寄り、その胸へと飛び込んだ。匠海もしっかりとヴィヴィを受け止めてポンポンと頭を撫でてくれる。
「おめでとう」
耳元で小さく囁かれた栄誉を称える言葉に、ヴィヴィはさらに抱擁をきつくする。
(お兄ちゃん……大好き!)
離れたくなくてぎゅうとしがみついていたヴィヴィだったが、グレコリーが、
「え~~、ダッドにはハグしてくれないの~?」
と情けない顔をしてこちらを見ていたので、ヴィヴィは「しょうがないなぁ~」と可愛げなく呟くと匠海から体を離し、逞しい父の胸へと文字通りダイブしたのであった。