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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第108章
「あ、クリスも! 185cmで手が大きいんです」
そう力説するヴィヴィに、白砂は白い歯を見せて笑う。
「あははっ で、180cmの俺も、手がデカいって?」
「はい。羨ましい~~」
胸の前で両手の指をわきわきさせるヴィヴィは、心の底からそう漏らす。
165cmのヴィヴィは、日本女子の平均身長よりはだいぶ高い方だが、何故か掌は大きくなくて。
ピアノを弾くには足りないそれを、ヴィヴィは何とか自分なりに運指を駆使して、弾いている次第で。
「まあ、大きいのは手だけ、じゃないけどね?」
白砂のその声に、視線を上げたヴィヴィは、こてと首を傾げ、
「ん……? あ、足も大きいですね? ピアノのペダル、踏みやすそう」
「う~~ん。そういう意味じゃ、ないんだけどねえ?」
そう言いながら苦笑してみせる白砂に、さらに首を傾げたその時、
「あ、お兄ちゃん」
噂をすれば何とやら――。
分厚い防音室の扉を開いて入って来た人物に、ヴィヴィは振り向いてその名を呼ぶ。
ストライプのボタンダウンシャツに、編み込みが映えるオレンジのカーディガン。
ベージュのチノパンという、ラフな格好で現れた匠海は、何故か虚を突かれた様な表情を浮かべて口を開く。
「ヴィヴィ。こちらは……?」
ぴょんとソファーから立ち上がったヴィヴィは、にっこりと微笑む。
「あ、お兄ちゃんは初対面だね? ヴァイオリンとピアノを教えて下さる、白砂 今(こん)先生。先生、上の兄の――」
「篠宮 匠海です。初めまして」
妹の紹介を遮って自分で名乗った匠海は、ソファーセットに近付いてくる。
「ああ、ヴィヴィの話によく出てくる “お兄ちゃん” だ。初めまして、白砂です。同い年だそうで、お近づきになれて光栄です」
にこやかに自己紹介した白砂は、右手を差し出し、匠海と握手を交わす。
「こちらこそ」