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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第108章          

 一緒に席に着いた匠海に、茶が振る舞われる中、

「今先生、お兄ちゃんはピアノとチェロ、やってるの。すっごく上手なんですよ?」

 “自慢の兄” を嬉しそうに紹介するヴィヴィだったが、

「もう、それ、10回は聞いた……」

 一見 優し気な顔に、うんざりした表情を浮かべる白砂に、ヴィヴィはきょとんとする。

「え? 10回は言ってませんよ。5回くらいは言ったけど」

(だって、ホントのことだも~ん♡)

「あははっ 3回のレッスンで5回も言ってたら、それもう、 “重度のブラコン” だよ!」

 爆笑する白砂に、ヴィヴィは、

「そ、そんなことないもんっ」

 とムキになって言い返す。

 隣に腰掛けた匠海も、少し呆れ顔だった。

「ははぁ~、ブラコンか~。 “フィギュアの世界女王” がブラコン……。俺、周りに言いふらしちゃおうかな?」

 にやりとほくそ笑む白砂は、もちろんヴィヴィをからかって、そう言っただけだろうが。

「んな゛っ!? や、やめて下さいぃ~~っ」

 血相を変えて止めるヴィヴィに、白砂はまた吹き出す。

「あはは、冗談だっての。じゃあ、そのお茶飲み干したら、 “愛しのお兄様” の前で、もう一回頭から通そうね?」

「え゛……」

 いきなり現実に引き戻す講師の言葉に、ヴィヴィの可愛らしい顔が引き攣り。

「君のダメダメ “ラグタイム” を聞いて貰って、自主練、お兄様にみっちり付き合って貰いなさい」

「ふぁ~~い……」

 ウバのミルクティーを飲み干したヴィヴィは、立ち上がって重い足取りでピアノへと向かう。 

 先程と大差無い、ズレまくりの『ピアノ・ラグ・ミュージック』を披露すれば。

 匠海にも「う~~ん……。ヴィヴィにはまだ、この曲は早いんじゃ?」とダメ出しされ。

「しょぼ~~ん……(´・ω・`)」

 冗談か本気か分からない効果音と共に、鍵盤の上に突っ伏したのであった。




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