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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第108章

確かに白砂は背が高いし、容姿はヨン様似で整っているほうだし。
性格は……見る人によっては、軽薄に映るだろうが。
それを補って余りある、ヴァイオリンの腕もある。
「俺、現地妻、世界各国にいるからねえ」
まさかの白砂の返しに、ヴィヴィは灰色の瞳を真ん丸にする。
「えぇ~っ!? 彼女募集中、なのに? 罪造りな男ですね~」
初対面の時「現在 彼女募集中」と言っていたのは、冗談だったのだろうか。
「だって俺、モテモテだからさ」
「ふふん」と得意げに胸を反らす白砂に、ヴィヴィは声を上げて笑う。
「ほら、これが カリフォルニアの彼女」
パンツのポケットからスマホを取り出した白砂は、そう言いながら写真を選び出し、ヴィヴィへと向ける。
「え~~!? 見たいみたいっ ……わあっ 可愛い!」
「でしょう?」
「でも、今先生……。ロリコンさん、だったの?」
ヴィヴィが不思議そうに、そう確認する理由。
スマホに映し出されていたのが、どう見ても3歳児くらいの金髪碧眼の少女で、小さなヴァイオリンを手にニッコリしていたからだ。
もしこの幼女が現地妻だとしたら、 “青田買い” も甚だしい。
「ああ、0歳児から100歳のお婆ちゃんまで、すべての女性が俺のストライクゾーンだよ」
「あははっ」
フェミニストなのか節操が無いだけなのか、そんな事を自信満々に言ってのける白砂が可笑しくて。
だからヴィヴィは、気付くのが遅れた――匠海が防音室の扉を開いたのを。
「あ、お兄さん。お邪魔しています」
にこやかに挨拶した白砂の様子に、やっと気付いて扉を振り返ったヴィヴィは、その小さな顔に嬉しそうな微笑みを浮かべる。
「あ、お兄ちゃん」
妹に小さく微笑んだ匠海は、白砂に向かって会釈する。
「こんにちは。俺は荷物を取りに来ただけなので、どうぞ気にせず続けて下さい」
「はい。じゃあ、ヴィヴィ。俺がロリコンかどうか は置いておいて、もう一度 冒頭から。そうだな……」
そこで言葉を区切った白砂は、ヴィヴィの手からヴァイオリンを取り上げ、
「ほら、このヴァイオリンの、美しく洗礼されたフォルムの様に “女体の神秘” を感じながら、謳ってごらん?」
黒縁眼鏡の瞳をうっとりと細め、女性の腰よろしく ヴァイオリンのくびれを撫でる白砂。

