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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第108章          

「今先生……。ヴィヴィ、女だから、女体の神秘は、よく分かんない……」

 ちょっとげんなりした様子のヴィヴィに、白砂がにやりと嗤う。

「ああ、これはこれは失敬。いやはや、たまに、可愛らしい “少年” と錯覚する瞬間があってねえ?」

「……~~っ どういう意味ですかっ!?」

 絶句ののち、両腕を振り上げてそう喚いたヴィヴィと、その様子に声を上げて笑う白砂。

 師弟の仲睦まじい様子を、奥のミキサー室にいた匠海は、無表情で聞いていた。






 その日の夜。

 ヴィヴィは匠海のリビングで、晩酌に付き合っていた。

 シャンパンを愉しむ匠海の隣、ガラスの器に入ったブラックベリーを、唇に挟んだヴィヴィ。

 妹の薄い唇ごと吸い上げた匠海は、ヴィヴィの口内で舌を使って果実を潰し、瑞々しい口付けを与えていく。

「ん……っ ふぅ……ぁ」

 鼻に抜ける甘い吐息を吐き始めた妹から、唇を離した匠海は、互いの額をこつりと合わせ、至近距離で見詰めてくる。

「ん?」

「……甘酸っぱい、の……」

 飲み下したベリーも。

 思わせぶりで、すぐに離れて行ってしまう、匠海のキスも。

「もう一回、するか?」

 自分と同じ灰色の瞳が、徐々に熱を持ち始めていた。

「……ううん……」

 そう囁いて視線を落としたヴィヴィ。

「どうして?」

 下腹部に響く低音でそう囁かれれば、単純なヴィヴィの鼓動はすぐに跳ね上がり。

「…………ガマン、出来なくなっちゃう……もん」

 土曜日の昨夜。

 2人は性行為を持った。

 それも、ヴィヴィが腰砕けになって立てなくなるほど、濃厚なのを。

「ふ……、本当に可愛らしいね、お前は」

 薄い唇を染める紅い果汁をぺろりと舐め取った匠海は、ローテーブルからグラスを取り上げ、シャンパンをあおった。

 しばらくヴィヴィをからかい、遊んでいた匠海だったが、

「ヴィクトリア。ヴァイオリンだけど……」

 自分でシャンパンボトルを取り上げた匠海は、雫を拭き取りながらフルートグラスに注ぐ。

「ん? あ、お兄ちゃん、今日聴いてたでしょ~~? うふふ、白砂先生が「プルチネラはモテ男」って言うから、ヴィヴィ、お兄ちゃんのこと思い浮かべながら弾いちゃった♡」

 その結果、白砂からも及第点を貰えた。

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