この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第108章
「……~~っ!? ヴィヴィ、そ……そんな事、言ってないっ!!」
ペ――自分は絶対に、そんな単語を使ったりしない。
たとえ、意識が朦朧としていても。
うん、絶対に!
「言いました~~」
間延びした声で楽しそうに言い募る兄。
「言ってませんっ」
「言いましたぁ~~」
妹の神経を逆撫でする様に続ける匠海。
「~~~っ!! ……てか、あれ……? でも、どうして今先生だけ……なの?」
ヴィヴィのその疑問に、匠海は「ん?」と色気を含んだ声で先を促してくれる。
「セルゲイは? 何で今先生は駄目で、セルゲイは良いの?」
白砂はイケメンだから、嫌だという匠海。
一方、ロシア語家庭教師をしてくれいているセルゲイ=スミノフは、円もぞっこんのイケメン。
30歳と少し兄より年齢は上だが、彫りの深い眉の下の垂れ目気味の瞳と甘いマスクは、女子なら必ずキャーキャー言う程のモテ男だろう。
(まあ、ヴィヴィは、なんとも思わないけど……)
「ああ、セルゲイはいいんだ」
さっぱりした兄のその返しに、ヴィヴィの頭の中は「???」で一杯になる
(え? な、何で……? 今先生はお兄ちゃん好みのイケメンで、セルゲイはお兄ちゃん好みじゃない……とか?)
しかし、その予想の遥か上を行く兄の返事に、ヴィヴィは最初何を言われたのか判らなかった
「彼は、ゲイだからね」
「………………………………え?」
きょとんとするヴィヴィが後ろを振り向けば、匠海が広い肩を竦めながら再度説明する。
「だから、セルゲイは “男にしか興味がない” から、ヴィクトリアには手を出さないってこと」
兄の瞳を見詰めながら、ヴィヴィはしばらく固まっていた。
それだけ、今迄ヴィヴィが生きてきた中で、その告白はぶっ飛んだものだった。
「…………うぇえ゛えええ~~っ!?」
きっかり30秒後にそう叫んだヴィヴィ。
広いバスルームにその細い悲鳴が反響し、兄は少し五月蠅そうに眉を顰める。
が、ヴィヴィはそれどころじゃなかった。
「じょ……、冗談、だ、よね……?」
「冗談でお前の家庭教師になんて、選べられるか。ちなにみセルゲイは “ノンケは専門外” らしいから、クリスも大丈夫だ」