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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第108章
「ヴィヴィ、馬鹿だから、高いところ好きだよ?」
そうおどけたヴィヴィに、匠海は「知ってる」と笑いながら、背後からその躰を胸に抱き寄せた。
「綺麗……だけど。これが、ディナー?」
正直、ヴィヴィは “花より団子” な人間なので、これだけの夜景を目にしても、やはりお腹は膨れない。
「ふ……。ルームサービス、取ろうか。ヴィクトリアを独り占めしたかったから、レストランは今度、な?」
こめかみに唇を寄せながら甘い声で囁かれれば、もうヴィヴィは「うん♡」以外の返事を思い付かなかった。
20ページもあるルームサービスのメニューを、いちゃいちしながら選び。
「お酒、飲んでいいか?」
兄のその問いに、ヴィヴィの胸は大きく跳ねた。
もちろん、返事は「YES」。
全日本選手権まで1週間を切っているが、今日は土曜日だし。
早朝から昼過ぎまで行った練習では、満足いく仕上がりだった。
そして18歳になってから、両親はヴィヴィの外泊に口出ししなくなった――英国では成人年齢に達した、との理由で。
朝帰りに頬を染める妹に、いきなり欲情した匠海が覆い被さって来た。
「だ、だめぇ……っ」
「ん……。少し、だけ……」
オフホワイトのワンピの上から、優しく乳房をまさぐられて。
薄紅色だった頬が薔薇色に染まり、薄い唇から切なげな吐息が漏れ始めたところで、匠海は腕を引っ込めた。
「このままお前を食べちゃいたいけれど。試合前なんだから、食事はきっちり採らないとな」
抱き起されたヴィヴィは、「ん……」と頷きながらも、少々――いや、だいぶ残念そうだった。
生春巻きにサラダ、飲茶に寿司、天麩羅……と、バラエティーに富み過ぎた夕食を食べさせ合いっこし。
ヴィヴィは先程の困惑など、綺麗さっぱり記憶の彼方へと葬っていた。
ガラス張りのバスルームからも、寝室の先に続く夜景が眺められ。
「向こうから、見えてないかな……?」
恥ずかしがるヴィヴィの躰を、
「俺に恥ずかしいとこ洗われて、真っ赤になってるヴィクトリア、見せつけたいけどな?」
匠海はそんな意地悪を囁きながら、丹念に泡風呂で洗い清めてくれた。