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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第108章          

 白いシーツの上にくたりと横たわるその肢体は、数分前からぴくりとも動かない。

 緩慢に開かれた両脚の付け根は、収まりきらなかった白濁に汚れていた。

 白い乳房を彩るのは薄紅色の尖りと、その周りに咲いた鬱血の痕。

 長い金色の髪は、先ほど匠海が撫で付けるまでは、シーツの上でくしゃくしゃになっていた。

 まだ、幼い。

 18歳になったのに。

 後5ケ月ほどで19歳になろうというのに。

 ヴィヴィの躰と外見は、15歳で初めて躰を繋げた時から成長もしていなければ、劣化もしていなかった。

 しかしその精神は日々成長し、大人へと近付いている。

 大切なものが増え、守りたいものが増え。

 それによって増した苦悩や試練に向き合える強さも、備え始めている。

 臨んだのは、自分なのに。

 妹にそうなって欲しいと、導いたのは紛れもない己なのに。

 今のヴィヴィを見下ろす匠海の瞳は、昏く濁っていた。

 薄い躰の脇に投げ出された片腕を取り上げた匠海は、細い掌に頬を寄せる。

「ヴィヴィ……。俺を、止めてくれ……」

 暗い寝室に響くのは、力の無い細い声。

 全く起きる様子の無いヴィヴィの、もう一方の腕を掴んだ匠海は、両掌を自分の首筋へと導き、あてがう。

「ヴィクトリア……。その手で……殺してくれ……」

 掌に伝わる咽喉の震えも、

 縋り付くその懇願も、

 今のヴィヴィには届かない。

「そうでないと、俺はいつか……、

 お前を、壊してしまう――」
 
 くしゃりと苦しそうに歪んだ顔を、妹の両手の中に埋める兄。

 その姿は、いつも自身に満ち溢れ、余裕を滲ませた匠海の姿からは想像も付かないほど、弱々しいものだったのに。

 その兄本人に抱き潰され、幸福の中 失神したヴィヴィには、気付けなかったのだ。





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