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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第108章          

 12月22日(水)をもって、大学は冬季休業へと入り。

 その翌日、23日(木・祝)~26日(日)にかけて、名古屋で繰り広げられた全日本フィギュア選手権。

 羽生(はぶ)・宮平・双子は、それぞれ誓った「世界選手権の切符」を危なげなく掴み取り。

 3月後半に行われる世界選手権での、「五輪の出場枠3枠獲得」という目標へと向けて、更に己を追い込んでいく決意を固めた。

 ただ、2日後に行われた全日本のエキシビション――メダリスト・オン・アイスが終われば、ヴィヴィにとって短い年末年始が訪れ。

 12月30日(木)。

 東大スケート部の滑り収めに参加した双子は、そのまま部員たちとカラオケに繰り出した。

 が、その4時間後。

 篠宮邸に帰宅したヴィヴィは、表面はにこやかだが、内面は憤慨していた。

 クリスと就寝挨拶を交わすと、まっすぐに匠海の部屋へと駆けて行く。

 ノックもせずに兄の私室への扉を開いたヴィヴィは、優雅に黒革のソファーで寛いでいた匠海に向かって叫んだ。

「おにいちゃんっっっ!!」

「ああ、おかえり」

 少し驚きながらもにっこりと笑ってくる匠海に、ヴィヴィは灰色の瞳を剥く。

「おかえり じゃな~いっ! なにっ あの選曲っ!!」

「なにって。盛り上がっただろう?」

 しれっとそう返してくる兄に、図星だったヴィヴィはぐっと押し黙ったが、それも一瞬で。

「~~っ!? も、盛り上がったけどっ! ていうか、ヴィヴィ、笑われてただけだけどっ!!」

「じゃあ、良かったじゃないか」

「~~~っ!! よ~く~な~い~っ!!!」

 ヴィヴィがこんなに喚くのには、理由があった。

 時は3週間前に遡る――。



 生まれて初めてカラオケに行くことになったヴィヴィは、困って兄を頼った。

「カラオケって、歌、歌うんでしょう?」

「あたりまえだろう?」

 毎夜の添い寝の最中、羽毛布団の中に身を横たえたヴィヴィの問いに、兄はそう一刀両断する。

「何歌えばいいんだろ……。ヴィヴィ、日本の曲、童謡とか……、ん~~、有名どころ? しか知らない」

 その有名どころのJ-POPも、5年程前のものだ。

 ここ数年のヴィヴィは忙しくて、それどころじゃなかったから。

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