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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第108章          

「……やきもち……?」

「ふんっ」

「やんっ!! 可愛い♡」

 鼻を鳴らしてそっぽを向いた匠海に、ヴィヴィはそう言いながら飛び付いた。

「五月蠅い。今度から男のいるカラオケ行くときは、俺が毎回 選曲してやる」

「え゛~~っ」

 首に両腕を回したまま、不服そうに唇を尖らせるヴィヴィを、匠海はぎろりと睨みつける。

「え~じゃありません。お前が野郎の前でアイドルバリバリの歌をうたったら、お持ち帰りされようとするのが、目に見えてるんだよっ」

「お持ち帰り?」

(……て、なに……?)

「ジュースと偽って酒飲ませて酔っぱらわされた上に、野郎の家に連れて帰られて、強引にセックスされる」

 若干偏ったその「お持ち帰り」の説明に、ヴィヴィの可愛らしい顔がふにゃと歪む。

「えっ!? やだぁ~……っ」

「嫌だろう? じゃあ、俺の言う事 きけるね?」

「うん。きく。ヴィヴィお兄ちゃん以外、絶対絶対、やだもんっ!!」

(ヴィヴィの躰に、お兄ちゃん以外の男の人が触れる……? 考えただけでも、キモチワルイ……っ)

 素直過ぎるヴィヴィに、匠海は大変満足したらしい。

「いい子だ。っていうか、髪と服から いかがわしい匂いがする。風呂入るぞ」

「え?」

「一緒にお風呂、入ろう?」

 そう優しく言い直してくれた匠海に、ヴィヴィの頬がぽっと火照る。

「え……、あ、うんっ」

「なにを今更、恥ずかしがってる?」

「だ、だって……」

(今日、木曜だけど、えっち、するのかなって……)

 もう兄の会社も年末年始の休暇に入っており、匠海は明日会社に行く予定は無いみたいだし。

 先週は全日本選手権で、週に一回のセックスはおじゃんになったし。

 今はまだ、22時という、ヴィヴィにとっては早い時間だし。

 淡い期待と共に兄の灰色の瞳を覗き込めば、

「心配するな。綺麗にした後は、責任もって隅々まで、味わってあげるから」

 そんな卑猥な返事を寄越した匠海は、軽々と妹を抱き上げ、バスルームへと消えて行ったのだった。




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