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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第109章           

「お前が心配する事は一つも無いよ。俺を信じて、ヴィクトリア」

 膝の上に置いた妹の両手を取った匠海は、そう優しく諭してきて。

 真っ直ぐに見つめてくる兄の瞳に、嘘偽りは無かったし。

 ヴィヴィは兄の視線を受け止めながら、こくりと頷きそうになって――固まった。

「………………」

 兄の瞳と合わせていた灰色の瞳が、徐々に細動しだす。

 真っ白だった頭の中に浮かんだ、最初の疑問は、

(どうして……今、なの――?)

 お見合いを一週間後に控え、断ることも日取りを延期することも、ほぼ不可能であろう今日。



『俺、お見合いするからね』



 お見合いしてもいいか? 

 でも、 

 お見合いの話が来ているけれど、どう思う?
 
 でも無く、

 兄が口にしたのは、決定事項のみ。
 
 ヴィヴィの意思を確認する気は、毛頭無かったということか。

「ヴィクトリア……?」

 硬直したまま狼狽えた様子の妹に、匠海は気遣わしげに呼び掛けてきたが、ヴィヴィは首を横に振り始め。

 それはどんどん早くなり、金色の髪が毛先を跳ねさせ、さらさらと音を立てる。

「ヴィクトリア……? おい、落ち着け」

 兄の静止など届いていない様に、ヴィヴィは取られていた両手をぎゅうと握り締める。

「……どう、して……? どうして、お兄ちゃん……っ」

 今すぐ兄を問い詰めて、明確な答えを欲しいのに。

 何故かその焦りと反比例する様に、声を発する為の気道が塞がっていくのを感じる。

「……ヴィヴィ……は、お兄ちゃん、の、なに……?」

 咽喉が痛い。

 苦しい。

 まるで、今の自分の心を映した様に。

「恋人だよ」

 必死に絞り出した問いへ、さらりと即答した兄に、余計に腹が立つ。

 そうか。

 そうだ――自分は今、物凄く腹を立てている。

 目の前にいる、自分の両手を握る最愛の男に。

「なのにっ ……なのに、なんで……? 何で、お見合いなんか……するの?」

 そう問い質す掠れ声は、自分で聞いていても醜かった。

 けれど、目の前の兄は全く狼狽えもしていなくて。

 いつも通りの美しい兄のまま。

「だから、いま説明した通り――」

「いやっっ!!」

 ヴィヴィはそう叫ぶと、匠海の両手を振り解いた。

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