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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第109章           

 さすがの匠海も驚いたらしく、切れ長の瞳がはっと見開かれ。

 けれど、その下の少し大きめの唇が開く瞬間、ヴィヴィは両掌で自分の耳を覆った。

「……――だろう……? ……――トリア……」

 匠海が何か言っているのに、聞きたくなかった。
 
 意味が分からない。

 どうして。

 自分という恋人がいるのに。

 将来を誓い合った仲なのに。

 なのに何故、兄はお見合いなどするのだ。

 訳が分からない。

「……――リア……。ヴィクトリア、頼む、聞いてくれ……」

 くっきりと鼓膜を揺らせたその声に、ヴィヴィはふっと顔を上げる。

 目の前の匠海は、妹の両手首を掴み上げてその耳から外し、じっと瞳を覗き込んでいた。

 自分と同じ灰色の瞳。

 優しい光を宿していたかと思えば、慾にまみれた濁りを浮かべ。

 嫉妬の炎を滾らせていたかと思えば、まるで心の奥底まで見透かす程の怜悧さを備える。

 ヴィヴィが恋焦がれている兄の瞳は、今は若干の困惑と、僅かな失望を浮かべていた。

「……――っ」

(なん、で……っっ)

 肋骨に守られているはずの心臓が、軋みをあげる。

 今のヴィヴィは、匠海から見れば莫迦な女に映っているのだろう。

 たった1回、叔母の顔を立てる為に、見合いをすると言っているだけなのに。

 これまでの恩を返す、その行為さえも許容出来ない、器量の無い子。

「やだやだやだ……っっ」

 ヴィヴィは掴まれた両腕を振り回そうとするが、兄の力に叶う筈もなく。

 間抜けな押し問答をしながら、それでもずっと「いやだ」と繰り返す。

「ヴィクトリア」

「いやぁ……っ お見合い、なんてっ 行かないで……っ!!」

 手首を掴まれたまま、兄のシャツに縋り付くヴィヴィを、匠海は困惑の表情で見下ろしていた。

 ヴィヴィがいるでしょ?

 お兄ちゃんにはもう、ヴィヴィがいるでしょ?

 付き合い始めた頃、言ってくれたではないか。



『お兄ちゃんのピアノも……っ お兄ちゃんの手も、胸も、全部、ヴィヴィのだよねっ!?』

『そうだよ。それに、俺の “心” もね』


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