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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第109章           

 そう。

 兄は自分のもの。

 兄の全てが、ヴィヴィのものなのに――。

 なのにどうして、みすみす何処の者とも判らない女性の前に、匠海を差し出さなければならないのか。

 絶対に相手の女性は、匠海に恋をする。

 否――もう恋に落ちているのかも知れない。

 そしてあらゆるツテを伝って、匠海の叔母まで辿り着いた。

 そんな女性に対して、兄が社交辞令とはいえ微笑んだりするなんて、絶対に耐えられない。

「……――っ」

 これは、この気持ちは やきもち なんかじゃない。

 嫉妬でもない。

 匠海がアレックスや白砂に感じたものと、一緒になんてしないで欲しい。

 混乱と、僅かに芽生えた猜疑心と、哀しさと。

 負の感情が一気に押し寄せてきて。

 どれから向き合えばいいのか、何から処理していけばいいのかと、顔を顰めた瞬間、

「いい加減にしろ」

 兄の発したその言葉に、ヴィヴィは耳を疑った。

「……え……?」

 匠海の声は静かで落ち着いていて。

 けれど、有無を言わせぬ響きがあった。

 見下ろしてくる端正な顔には、明らかにうんざりした表情が宿っている。

「こんな事、これから何十回とあるんだぞ? その度にこうやって、駄々を捏ねるのか?」

 はぁと吐き出された溜息は深くて。

 手首を掴んでいた大きな掌も、握り締めていたシャツと一緒に引き離されて。

 最後に突き付けられたのは、完全にヴィヴィを突き放す言葉だった。

「俺も、色々と考えての事だ……。聞き分けなさい、ヴィクトリア」

「………………」

 それからの事は、あまり覚えていない。

 匠海はヴィヴィを残し、部屋を出て行ってしまって。

 そしてヴィヴィは、黒革のソファーに腰を下ろしたまま放心していた。

 兄の言動に、ただただ驚いて。

 ヘリンボーン柄のワンピの裾が、ゆっくりと掌の中に巻き込まれていく。

『黒澤家には長年世話になっているし、今の篠宮の家業にも関わっている。まあ一回くらいなら、向こうの要望に応えるのも筋かと思ってね』

 その匠海の説明は、ヴィヴィも尤もだと思う。

 けれど――、

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