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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第109章
円と兄の太一とディナーを囲んだヴィヴィは、広大な日本家屋の邸内を案内して貰い。
円の部屋のセミダブルベッドで、一緒に寝ようとしていたヴィヴィを、
「うちの妹は寝相が悪いから、ヴィヴィちゃん、蹴り落とされると思うけど……」
通りがかった太一が止め、結局ベッドの横に布団を敷いて寝ることになった。
先に風呂に行った円の部屋は、先程までの賑やかさとは異なり、しんとしていて。
否が応でも、その小さな頭の中に、今日の匠海とのやり取りが過ぎる。
布団の上で三角座りをしたヴィヴィは、困り顔で自問自答する。
(ヴィヴィが間違っているのかな?
ヴィヴィが謝ったほうがいいのかな?
確かに……お兄ちゃんが言う事も、分かるし……)
恋人である自分に事後報告で、事前に意思を確認されなかった事も、時間が経って冷静になり始めた今となっては、そうしてしまった匠海の考えも分かる。
お見合いの話が出た時点でヴィヴィに伝えていたとしても、きっと今日と同じ様な反応しか出来なかったであろうし。
そう考えられるくらいまでには、ヴィヴィも冷静になっていた。
けれど、それでも尚、今のヴィヴィには釈然としない事があった。
「………………」
(どうして、お兄ちゃんは……)
布団に落ちていた視線がゆっくりと上がり、円の部屋の右側の壁へと注がれる。
しばらくじっとそちらの方向を見つめていたヴィヴィは、やがて立ち上がると、重い足取りで円の部屋を出た。
美しく磨き上げられた板張りの廊下を進み、右隣の部屋の前で止まったヴィヴィは、一瞬の躊躇ののち、軽く握ったこぶしでノックする。
「……はい?」
扉越しに聞こえたのは、太一の声。
観音開きの扉を少しだけ開けたヴィヴィは、金色の頭だけをひょっこり覗かせる。
視線の先、焦茶の革張りソファーで胡坐をかいた真行寺が、その上でノートPCを弄っていた。
「……水槽、見せて貰ってもいいですか?」
「あ、うん。いいよ。散らかってるけれど、どうぞ」
そう謙遜する太一の部屋は、彼の美的センスに溢れた、居心地の良い落ち着いた空間だった。