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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第109章
「…………そう、で、しょうか……?」
「うん。たぶんね」
自信無さ気に呟くヴィヴィに、太一は微笑んで頷いてくれた。
「……そっか……。だと、いいな……」
自分を愛していると言ってくれる匠海。
毎夜添い寝をし、まだまだ精神的に幼い自分に、心でも寄り添ってくれる兄のその姿。
ヴィヴィはそれをこの1年と2ヶ月、毎日 目にしてきた。
それもこれも、これからもずっと一緒に生きて行こうという、匠海の心の現われ――。
「太一さん、ありがとう……。ヴィヴィ、かなり楽になりました」
くしゃりと泣き笑いの表情を浮かべたヴィヴィに、隣の太一はほっとした様子で瞳を細める。
「そうか、良かったよ。ほら、僕は出会いからして “あれ” だから。遠慮せずにこれからも相談して?」
太一の言う “あれ” とは――
実兄に告白して見事玉砕したヴィヴィが、その兄から紹介された太一とデートに出掛け、その翌日に朝帰りをし。
そしてヴィヴィの匠海への気持ちに気付いた太一の胸を借りて、号泣してしまった過去。
「……いいん、ですか……?」
太一に迷惑を掛けているのは気付いている。
けれど今のヴィヴィには、彼くらいしか頼れる人がいなかった。
「うん。相談じゃなくても、愚痴ぐらいなら聞いてあげられるし。なにせ、いっつも円の失恋を慰めてるし、慣れっこだ」
そうおどけて両肩を上げて見せた太一に、ヴィヴィは「あははっ」と声をあげて笑う。
「円の親友なら、僕の妹も同じだよ」
そんな信じられない事を言ってくれる太一に、ヴィヴィは驚いて灰色の瞳を丸くする。
彼の妹の円は、末っ子なのにしっかりしていて、面倒見の良い面白い子。
太一が友人として親しくしている匠海は、言わずもがなで。
そして、素敵な人々に囲まれている太一自身は、博識で他者を思いやれる本当に懐の深い人。
太一という人間と巡り合えた幸運と、紹介してくれた匠海と、そしてもちろん太一本人にも、ヴィヴィは心から感謝した。
「……ありがとう、ございます……っ」