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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第29章                              


 先の選手二人が滑る時間を待ちながら、体が冷えないようにトレーニングスペースで軽くジョギングをする。イヤフォンから聞こえるのはAmiret el Sahara (Desert Princess)という、ヴィヴィがベリーダンスで使用している曲だ。

「ヴィヴィ、そろそろ行くよ」

 スポンサーの大塚薬品工業から派遣されている柿田トレーナーにそう声を掛けられ、ヴィヴィは返事をするとバッグから手鏡を取り出した。ホテルで時間をかけて念入りに施したメイクと、眉間に付けたビンディと呼ばれるインド古来の装飾が剥がれていないかを確認するとアリーナへと足を踏み入れた。

 最終グループの第二滑走は17歳の本田まりな。ノービスのころからその表現力の高さと、天才子役を妹に持つことから注目が集まっていた本田は、ジャンプの基礎点が1.1倍となる演技後半に連続ジャンプを決めたようで、大きな声援が起こっていた。それを聞きながら、ヴィヴィはストッキングを捲りあげてその下のスケート靴の紐が緩んでないかを確認する。

 本田の演技が終了しヴィヴィはリンクへ入ろうと歩き出す。しかしその金色の後頭部に何やら大きくて柔らかなものが「ボスン!」と音を立ててぶつかってきた。隣にいた柿田トレーナーが目を真ん丸にしてヴィヴィを見つめいている。

「………………?」

 痛くはないが少し前につんのめってしまったヴィヴィは後頭部を手で押さえて後ろを振り向くと、斜め上の観客席にいた「しまった」という表情の女性ファンと目があった。みるみる顔面蒼白になっていく彼女が、ヴィヴィに本田へのプレゼントをぶつけてしまった張本人のようだ。

 ヴィヴィは足元に転がっている大きなぬいぐるみを見つけて拾い上げる。巷で流行っているイラックマには、精巧に作られた本田のFP衣装が着せられていた。

(わぁ……器用だな~)

 ヴィヴィは心の中でそう感想を漏らすと、イラックマの両手をひょいとその丸いぬいぐるみの頭に添え「痛いよ~!」という風なジェスチャーをさせた。その一部始終を見守っていたヴィヴィの近くの観客からどっと笑いが起きる。ヴィヴィは彼女ににこりと笑いかけると、近くにいたフラワーガールにぬいぐるみを渡してリンクへと向き直った。

(集中、集中……)

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