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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第109章
お風呂を頂いてすっきりしたヴィヴィは、マキシ丈のナイトウェア姿で部屋へと戻り。
暖かな緑茶を飲みながら、しばらくは他愛もない話に興じていたのだが。
「マドカ……、あの……、本当にごめんっ」
いきなりそう謝罪を口にしたヴィヴィは、下げた頭の前で両手を合わせる。
「へ? どした? いきなり」
鳩が豆鉄砲を食らったように面食らった様子の円に、
「セルゲイの、こと……なんだけど……」
ヴィヴィは眉をハの字にしながら説明し出す。
11月末、匠海から聞いた、ロシア語家庭教師・セルゲイ=スミノフの、いわゆる――性癖、を。
「言わないと、言わないと」と思ってはいたのだが、毎週月曜日にスミノフの前で可愛らしい円の様子を見ていると、ヴィヴィはもう言えなくなってしまって。
けれど、円の反応は意外なものだった。
「なんだ、そんなこと」
けろっとした顔で見返してくる円に、ヴィヴィは訳が分からず「え……?」と声を漏らす。
「知ってるよ」
「え……? い、いつから?」
まさかの円の返事に、ヴィヴィは驚きを隠せない。
「ん~、3回目のレッスンの時だったかな。去年の6月くらいに双子んちでレッスンした時に、匠海さんに会って、忠告された」
「お兄ちゃん、が……?」
「うん」
昨年の6月と言えば、まだ3人がセルゲイにロシア語を学び始めて間もない頃。
東大の五月祭でセルゲイに一目惚れした円は、その翌日に5人で鎌倉へ出掛けた時に「セルゲイ、超カッコいい♡」とずっと言っていた。
なんと匠海は、その3週間後には円本人に、セルゲイがゲイである事を伝えていたとは。
(っていうか……、なんでヴィヴィには “そこまで” 説明してくれないのっ もうっ!!)
一瞬、頭の中で兄をそう詰ったヴィヴィだったが、今はそれよりももっと大切な事がある。