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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第109章           

「ほら、これ着ないと、今日はセックス無しだよ?」

「…………無くて、いいです」

 兄の無茶苦茶な言い分に、少々呆れ気味のヴィヴィは、ぼそりと返す。

「え……。頼むよ。絶対に似合うから、な?」

 洋服をヴィヴィの前に当て見せたり、コルセットベストのベルベットの生地を触らせてみたり。

 異常な熱心さで懇願してくる匠海に、最終的にヴィヴィは折れた。

(これが、惚れた弱み……って、やつか……)

 湯を使い、着替えて出て来たヴィヴィを、匠海は手放しでべた褒めしてくれた。

「ヴィクトリア……。お前、どんだけ可愛いんだよ」

 何故かむくれ気味の妹に、広いリビングでくるりと回らせたかと思えば、

 挙句の果てには「モデルみたいにウォーキングして」等と言い出して。

「……やなこった……」

 半眼でぼやく妹に、匠海は何度も強請ってきたが、ヴィヴィはそこは聞き入れなかった。

「しょうがない。じゃあ、写真撮らせて」

「…………変態」

 撮った写真を何に使うんだ――と、ヴィヴィは嫌がったが、匠海はムスッとした表情の妹を、嬉々としてスマホで撮り始める。

「死ぬほど可愛い」

「フランス人形を超えた」

「部屋に飾っておきたいレベル」

 そう褒めちぎりながら、その姿をパシャパシャ撮りまくる匠海に、ヴィヴィはとうとう拗ねた。

「もう、お兄ちゃん……っ!」

「なんだい? ほら、最後に にっこりしてごらん?」

「……~~っ もう……っ ちゅー……してくれないの?」

 大きな瞳には寂しそうに、長い睫毛が影を落とし。

 艶々の唇は不服そうにつんと尖っていて。

(目の前にヴィヴィがいるのに、写真なんて撮ってないで、相手して……?)

「~~~っ!? ああっ なんて可愛いんだヴィクトリア!」

 妹の甘える姿に悶絶した匠海は、手にしていたスマホをぽいと放り、その華奢な躰を抱き上げた。

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