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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第109章
そう。
この世界選手権の結果如何で、2022年に行われるドイツ ミュンヘン オリンピックの、日本の出場枠が決まる。
目指すは、男女シングルともに上限の3枠。
その為には、出場した2名(3名出場の場合、上位2名)の合計順位が、13位以内である必要がある。
4年前。
平昌五輪の出場枠3枠を勝ち取ってくれた先輩方から、まだ “ぽっと出” だったヴィヴィが、その1枠をもぎ取り、平昌五輪に出てしまった。
だからヴィヴィは、絶対にこの3枠を取って帰らないといけないのだ。
それだけが、自分に出来る償い・恩返し――なのだから。
ただ、連戦連勝のヴィヴィとはいえ、油断は出来ない。
現に今、両脇を固めるのは、
2位 : ヴィヴィアン・リー(18) アメリカ
3位 : マリア・ソココワ(20) ロシア
五輪を目前に、各国でも着々と世代交代が進み、ジャンプに強い若手の選手が台頭してきていた。
「昨日の男子シングルのインタビューでは、日本人選手2名が「五輪の団体戦の為にも、絶対に3枠を獲る」と宣言していました。篠宮選手はその点についてはどう考えていますか?」
ドイツのメディアからの質問に、ヴィヴィはにっこりと笑う。
「私も同じ気持ちです。昨年の夏、五輪の団体戦で更に良い色のメダルを獲りに行くことを、皆で誓いました。シングルの選手達は勿論、日本では競技人口の少ないペアやアイスダンスの選手達も、日々精進してくれています。私自身、そんな日本選手の1人として戦えている事を、誇りに思っています」
流暢なドイツ語でそう答えたヴィヴィに、質問したドイツ人記者は微笑んだ。
「我がミュンヘンで、素晴らしい戦いが行われる事、期待しています」
「楽しみにしています」
と微笑み返したヴィヴィは、次の質問者へと視線を移した。
そして25日(金)。
ペアスケーティングの 棚橋 成美(30)・マービン 藤堂(32)が、ギリギリ10位に滑り込み。
なんと、ペアの出場枠は2枠となり。
男子FPでは見事、クリスと羽生(はぶ)で1・2フィニッシュを飾った日本は、余裕綽々で男子シングル3枠を獲得した。