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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第109章           

 4月17日(日)。

 夕方のリンクには、ヴィヴィの他に2名の男性がいた。

 ヴァイオリン・ピアノ講師の 白砂 今、

 箏(こと)奏者・作曲家の 中居 智弥。

 白砂はともかく、昨年の年末、彼に招待されたコンサートで紹介された中居が、何故ここにいるのか。

 その理由は――、

「本当に嬉しい。ヴィヴィちゃんのエキシビションで、僕の曲を滑って貰えるなんて!」

 興奮した様にそう言い募る中居に、ヴィヴィも嬉しそうに頬を綻ばす。

「ヴィヴィこそ、使用の許可を頂いて、それに振付を見に来て下さって、嬉しいです」

 年末に耳にした、中居作曲の『花のように』。

 初めて聴いて号泣してしまったその曲を、ヴィヴィはどうしても五輪シーズンに滑りたかった。

 正直、SPで使おうかどうしようか、ギリギリまで悩んだのだが。

「でも、箏 & ヴァイオリン バージョンを選んでくれて、良かった~。俺もヴィヴィのプログラムに参加したかったもんね~」

 そう間延びした声で零すのは、ヴィヴィの楽器講師の白砂。

 実は『花のように』には、幾つかの編曲があって。

 箏 & ヴァイオリン

 箏の独奏

 箏 & 尺八

 それらの音源を預かって来てくれた白砂と、一緒に聞き比べたヴィヴィが、

『箏の独奏も、いいなぁ……』

 と呟いた途端、

『えぇ~~っ 絶対、ヴァイオリンあった方がいいって! ほら、音色がクリアになるし、お客さんにも主題が伝わりやすいし!』

 白砂がそう力説してきた。

 黒縁眼鏡越しに、物凄く強い瞳で見つめられて。

 それに彼の言う通り、ヴァイオリンの音色が入っているほうが、心の琴線に響く様にも感じて。
 
 結局、白砂と中居で録音した音源を使うことに決定したのだ。

 今日はその振付をするのだが、曲のイメージを教えて貰って、より素敵なプログラムにしたくて2人に来て頂いた。

 振付は自身の手で行う事にした。

 ヴィヴィの持っているこの曲のイメージと、実際に作曲した中居のイメージと。

 ついでに、演奏している白砂の持つイメージを加味し、テーマをすり合わせ。

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