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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第109章           

 実際に動いて少しずつ、プログラムを創り上げていると、

「時間空いたから、観に来た」

 と、何故か匠海まで現れて。

 中居とヴィヴィが協力して振付を仕上げていく間、何故か白砂と匠海がず~~っと話し込み。

 時折こちらを見つめて、ふっと意味ありげに笑って来たり。

(な、何で来たんだろ、お兄ちゃん……)

 若干の照れ臭さを覚えながらも、ヴィヴィは何とかその1日で叩き台を創り上げ。

 その翌日にも母の助けも借りながら、今季のエキシビション・ナンバーを仕上げたのだった。

 そしてその週末。

 ヴィヴィはもう1曲、振付に頭を悩ませていた。

 7月と9月に参加予定のFantasy on Ice。

 ヴィヴィはそこで、ゲストアーティストのDREAMS COME TRUEとのコラボレーション・ナンバーを、披露しなければならない。

 昨年はクリスが、平井 堅とコラボし。

 音楽とスケートとの融合した贅沢な空間を作り上げ、大成功を収めていた。
 
 今回どの曲を使うかは、ヴィヴィに一任されていて。
 
「あれもいい、これもいい……」と、60曲もある彼らの曲に必死に悩んだのだが。

 結局、自分では決められなかったヴィヴィは、偏った選び方をした。

「クリスが去年滑ったの、平井さんの『LOVE LOVE LOVE』だったでしょ? だから、ヴィヴィも ドリカムの『LOVE LOVE LOVE』にする~っ♡」

 そんなとんでもない事を言い出したヴィヴィ。

 だが、その曲ならきっと誰でも知っているし、素晴らしい曲だから――と主催者側も納得してくれた。
 
 iPadに表示した歌詞を見ながら、ヴィヴィは繰り返し繰り返し曲を聴き。

 やがて両腕を胸の前で組みながら、「ん゛~~……」と唸る。

「どした、ヴィヴィ~?」

 サブリンクの傍の観覧席に座り込んでいたヴィヴィに、そう声を掛けて来たのは、ペアの下城 舞。

 零れ落ちんばかりの黒い瞳が美しい彼女の顔には、そこはかとない疲労が浮かんでいる。

 先の世界選手権で、棚橋 成美 & マービン 藤堂が10位となり、来年の五輪のペアの出場枠が2枠になった。

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