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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第109章
日本では希少価値のペアの選手である舞と、成田 達樹は、
「絶対に残りの1枠を自分達のものにする」
と、必死こいてジュリアン達のスパルタに付いて行っているらしい。
「んっと、これの振付を考えてるんだけど……。イメージが固まらないの」
ヴィヴィが向けたiPadの歌詞に、舞が興味津々に見入り。
「ん~……、確かに、どうとでも取れる歌詞だよね、この曲は」
舞もそう呟く様に、DREAMS COME TRUE『LOVE LOVE LOVE』の歌詞は聴く人に取っては、色々な意味に取れるものだった。
「そうなの。片思いの曲にも聞こえるし、両想いで幸せな曲にも聞こえるし……、でもでも! 終わった恋を思い出している風にも聞こえるの」
眉をハの字にしてそう漏らすヴィヴィに、
「あ、じゃあ。周りの人達に聞いてみたらどうかな? で、皆のこの曲に持つイメージを合わせて、振付してみるってのはどう?」
舞のその助言に、ヴィヴィの困り顔にぱあと明るい光が差し込む。
「うん! そうだね。そっか、幾通りの捉え方が出来るプログラムっていうのも、いいかもっ 試合みたいに “明確なテーマ” が必要な訳じゃないし?」
「名案、名案♡」と手放しに喜ぶヴィヴィは、まるで振付が終わったかのように、晴れ晴れとした表情を浮かべ。
その単純過ぎるヴィヴィの様子に、舞は苦笑したのだった。
その日の帰りのベンツの中。
ヴィヴィが手にしているiPadには、また件の歌詞が表示されていた。
(この曲は、失恋の曲……なのかな……?)
人の意見を聞いて回るのも大切だが、自分の持つイメージも、少しは固めておきたくて。
どうしても切なさを覚えるそのメロディーと歌詞に、ヴィヴィの薄い唇が、何故かだんだん尖っていき。
「………………」
(とりあえず……。今日、帰ったら……、お兄ちゃんに「愛してるよ」って言っとこ……)