この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第110章
五輪シーズンで忙しいのもあり、振付はジュリアンと双子で行う事になり。
ただ今、オペラで用いられる名曲揃いからの選曲に、頭を悩ませているのだ。
「使いたい曲、選んだ?」
母のその問い掛けに、双子はハモる。
「「選びました」」
匠海が3人を見守る中、ジュリアンが多数決を取り始める。
「じゃあ、聞いていくわよ~。『Angel of Music』使いたい人?」
「は~い」と挙手したヴィヴィ。
「『The Phantom of the Opera』使いたい人?」
「はい……」と、匠海に肩を抱かれながら挙手したクリス。
「ん~? じゃあ、『Masquerade』は?」
「は~~い」
そう間延びした返事を寄越したのは、まさかの匠海だった。
「あははっ 匠海はこの曲、使って欲しいの?」
破顔したジュリアンに、長男は頷く。
「うん。素敵だからね」
「ふふ、じゃあ~『The Point of No Return』は?」
母がそう、先を続けた途端、
「はいっ はいはいっ!」
そう元気に挙手してきたのは、開けっ放しの防音室の扉から現れた父だった。
隣に座っていたジュリアンがぱっと立ち上がり、グレコリーの所へと駆けて行き、
「グレコリー! お帰りなさい、ん~~っ ちゅっ チュッ♡」
「「………………」」
毎度の事だが、いい年をした息子と娘の前で熱い抱擁と口付けを交わす両親に、双子はまさにこんな顔→(-_-)をしていた。
「なんだ、クリス。そんな羨ましそうな顔しなくても、俺がキスしてやるぞ?」
「……は……?」
匠海の意味の分からない言葉に、無表情のままのクリスがそう返す。
「ほら、恥ずかしがるな。お兄ちゃんの親愛の情を受け入れるんだ」
抱いていた肩を引き寄せてくる長男に、弟は必死で抵抗する。
「誰、が……っ 男にキスされて、嬉しいの……」
「ロシアじゃ、男同士でマウス トゥ マウスするぞ?」
その訳の分からない言い分に、さすがのクリスもイラッとした様で、
「……~~っ 兄さん……。25歳になって、ちょっと、オヤジになったんじゃ……?」
「………………っ」
まさかのクリスの突っ込みに、絶句した匠海の顔があまりに面白くて。