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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第110章          

「ぷはっ アハ八ッ クリス、言う~っ!!」

 ヴィヴィは腹を抱え、ソファーの上で笑い転げた。

 いつも匠海にからかわれ弄られてばかりの双子は、ここぞとばかりに兄を言い負かしたと喜ぶ。

 けれど、匠海はそんな事でへこたれる男ではなく。

「ク~リ~ス~……っ お兄ちゃんは、怒りました。従って……本当にキスします」

 匠海は弟の肩を引き寄せると、男にしては細過ぎる身体をがっちりと捉え、力付くで端正な顔を寄せて行く。

「え……っ!? いっ 嫌だってっ あ……っ ん゛~~っ!?」

 抵抗虚しく、ぶちゅうと唇を奪われたクリスは、今まで見た事の無いくらい、瞳を真ん丸にしていた。

「ふ……っ 御馳走様でした」

 唇を離した匠海の、そのお礼の言葉に、クリスはソファーの上に崩れ落ちた。

「…………っ け、穢された気分……」

「あはっ! あはははっ(* ゚∀゚ )」

 弱々しい声でそう漏らしたクリスに、ヴィヴィは腹がよじれて痛くなりながらも笑い続けた。

「何やってんの、あんた達……」

「ははは! 我が家の子供達は、仲がいいねえ!」

 能天気な両親の声に、匠海ひとりが「してやったり」と満足そうな表情を浮かべていた。



「ってか、これじゃあ、やりたい曲、全部じゃないっ! さすがに4~5分でそれは無理よ~」

 結局、3人はどうしても使いたい曲を選び出し。

 それを旨く編集して、振付を考える事になったのだが。

「あれ……? もしかして、シリアスなプログラムにする気か?」

 使用曲リストを覗き込んだ父が、不思議そうにそう尋ねてくる。

「もしかしなくても、そうする気だよ? ダッド」

 娘のその答えに、齢50を超えた男が、唇を尖らせて反論してきた。

「え~~、お前達はあれだろう? THE ICEの “お笑い担当” だろう?」

「「……え……?」」

(お、お笑い担当……?)

「だって、同じくペアプログラムをする真緒ちゃんが “トリ” なんだから。お前達は前座として “お笑い担当” で盛り上げないとなあ?」

「「………………」」

 まさかの父の言葉に、双子は言葉を失い、互いの顔を見つめ合う。

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