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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第110章          

 そして何故か、父が嬉々として演出を始めるのを、母が「あ! それいいわねえ」とノリノリで支持し。

 目の前で着々と塗り替えられて行く、プログラムの進行。

 面白がった匠海まで、色々と演出案を出してきて。

 そうこうして出来上がった 篠宮ファミリー・プロデュース『オペラ座の怪人』。

「ま……、いっか……。確かに、これだと面白そうだし?」

 そう呟いて双子の兄を見つめたヴィヴィに、

「ん……。お客さんが楽しんでくれれば、もう、それでいいよ……」

 クリスも満更でもない様子で、納得したのだった。







 5月はとにかく忙しかった。

 アイスショーの番宣番組への出演。

 スポンサーのCM撮り。

 五輪シンボルアスリートとしてのメディアへの露出。

 五輪シーズンの為に、各紙・各局からも取材が殺到し。

 大学を早退することもしばしば。

 それでも絶対に、レッスンの時間は削れない。

 振付て貰ったSP・FP、それにエキシビ・双子プログラムも、反復練習して自分のものにしなければならないし。

 例年より多忙のスケジュールに、双子は結構いっぱいいっぱいだった。

 そんな中、匠海は3回目となるお見合いをした。

 5月21日(土)。

 早朝からのレッスンから帰宅した頃には、もう匠海は見合いへと出掛けていた。

 さっと汗を流したヴィヴィは、最近 おざなりになっていた講義の復習を集中して行い。

 愛車で児童養護施設 新緑寮へと向かった。

 当初は、父の会社の篠宮グループの社員ボランティアと伺っていたのだが。

 ここの所は互いにスケジュールが合わず、ヴィヴィは個別で訪問するようになっていた。

 というか、遊んで貰いに行っていた。

 
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