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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第110章          

 まだ梅雨には早いが、降り続く五月雨に、室内で遊ぶ事になり。

「なんか、ピアノ弾いて!」 

 そう強請られて、明るそうな曲を選曲して弾いていたのだが。

「その曲、知らない」

「え? そう? じゃあ、これは?」

 “子犬のワルツ” を弾き始めたヴィヴィに、

「クラッシック、つまんない~~!」

と小学生達からブーイングが起きる。

「え~? んじゃ、これはどうかな?」

 ジャズの “SING SING SING” なら、ノリが良いと思って弾いてみるが、

「ん~~、もっと、日本の曲がいい! EXILEとかAKB48とか!」

「うん、嵐とか!」

 皆が要求してくる日本のアーティストの曲を、ヴィヴィはほとんど知らなかった。

 というか、忙し過ぎて全然テレビを観れていないので、当たり前なのだが。

「ご、ごめ~ん。ヴィヴィ、知らないや~」

 へらへら笑いながら謝ったヴィヴィに、子供達は容赦なかった。

「え゛~~、ヴィヴィ、使えねぇ~」

 不満たらたら そう扱き下ろされたヴィヴィは、大げさに鍵盤に崩れ落ち、

「つ、使えない……orz」

 突っ伏しながらそう凹んだのだった。

「こら~、君達。ヴィヴィちゃんを困らせちゃダメよ~!」

 間に割って入ってくれる職員さんに、ヴィヴィは「だ、大丈夫っす」と全然大丈夫でない声で答える。

 そして、しばし貧相な胸の前で腕組みをしていたかと思うと、いきなり大きな声で歌いながら鍵盤を叩き出す。

「FIVE……ジャーン! FOUR……ジャーン! THREE……ジャーン! TWO……ジャーン! ONE……!」

 口でロケットの発射音を「ぶおおおおお~~っ!!」と発したヴィヴィに、子供達が「何だなんだ?」と振り返る。

「THUNDERBIRDS ARE GO!」

 そう発したヴィヴィが、嬉々として奏で始めたのは、懐かしの “サンダーバード” のオープニングテーマ。

(さすがにこれなら、聴いたことあるよね?)

 日本でも再放送されて、人気をはくしている人形劇。

 ヴィヴィの狙いは見事当たり、特に男の子達がわらわらとピアノの周りに集まってきた。

「♪サンダーバード  青く光る広い宇宙へ 行け! 風を巻いて♪」

 誰よりも大声で熱唱するヴィヴィに爆笑しながらも、子供達は楽しんでくれたようだ。

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