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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第110章          

 5月の最終週。

 国立代々木競技場で行われたArt ON Iceで、ヴィヴィは今シーズンのエキシビションを初めて披露し。

 そして怒涛のスケジュールの中、突入した6月。

 6月4日(土)に催された経団連総会後の懇親会への、匠海の同伴。
 
 いつにも増して持ち前の社交性を発揮したヴィヴィに、匠海は「ありがとう」と感謝の言葉を掛けて労ってくれた。

 自分がどれだけ兄の役に立てているのか――。

 ヴィヴィには、それを測り知る事は難しいけれど。

 それでも日々、自分の出来る事にはすべて、一生懸命取り組んでいた。







 6月5日(日)にはスケ連を通して、グランプリシリーズへのアサインが発表された。

 スケート・アメリカ

  羽生(はぶ)結弦 、 本郷 理花

  棚橋 成美 & マービン 藤堂

  マリア & アルフレッド渋谷

 NHK杯

  篠宮 クリス・ヴィクトリア 、 宮平 知子

  棚橋 成美 & マービン 藤堂

 中国杯

  宇野 昌麻 、 宮平 知子 

 フランス大会

  篠宮 クリス・ヴィクトリア

 スケート・カナダ

  羽生 結弦 、 本田 まりな

  マリア & アルフレッド渋谷

 ロシア大会

  宇野 昌麻 、 本田 太壱 、 本郷 理花
 
 そして、その6大会から勝ち上がった上位6名が、グランプリ・ファイナル(中国・北京)へと進出する事が叶う。
 





 6月11日(土)。

 本格的に梅雨入りしたその日、ヴィヴィは葉山にいた。

 もちろん、その隣にいるのは匠海。

 スケートのレッスンを終え、途中で食材等を調達し、別荘に辿り着いたのはもう夕暮れだった。

「先に、ディナーの仕込み、しておこう」

 シェフみたいな事を言って、着いた早々キッチンへ向かった兄。

 ヴィヴィはその腰に後ろから纏わり付き、幸せそうに匠海の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

 昔からそういう癖があった。

 兄である匠海に抱き着いて、いつもと同じその香りを確かめて、ほっとする。

 しかし、自分でも気付いていた。

 その癖が、最近 酷くなりつつあるのを。

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