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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第110章          

 1ヵ月前にプレゼントしたその赤いカードは、まだ1枚も使われていなかった。

「これからは、毎日つけるね?」

 シルバーの時計を愛おしそうに見つめるヴィヴィに、匠海は「よしよし」と言いながら、その金色の頭を撫で。

 徐々に近付いてくる兄の顔に、ヴィヴィはうっとりと瞳を細めた。

 別荘に到着して、初めてのキス。

 自分の太ももに跨らせた妹の唇を、何度も何度も角度を変えて奪ってくる兄。

 腰を支えてくれる大きな掌も、髪をかけた耳を擽ってくる指先も、すべてが気持ちいい。

 ようやく唇を離した匠海が、何故かヴィヴィの背中を掌で辿り始めて。

「………………?」

 不思議そうに兄を覗き込むヴィヴィの背で、「チー」と小さな音が立つ。

「え……? あ、だ、ダメ……っ」

 シフォン素材の紺のワンピ。

 その背中のファスナーを下された事に気付いたヴィヴィが、ワンピの前を押さえながら焦って兄を止めるが、

「ん? ダメ?」

 耳元に唇を寄せながら吹き込まれたのは、もう既に色気を伴った声音と、濡れた吐息。

「……っ あ……、しゃ、シャワー、浴びて、なっ ……あんっ」

 リンクから戻ってから湯を使ったが、ここに来るまでに、梅雨独特の蒸し暑い気温で、少し汗をかいてしまった筈。

 焦るヴィヴィに対し、匠海は妹の衣服を剥ぎ取る手を全く止める事は無く。

「大丈夫。たまにはヴィクトリアの味、堪能させて?」

 そんな恐ろしい言葉を零す匠海。

「……~~っ」

(ヴィ、ヴィヴィの味って、なんだよぉ~~っ 「しょっぱい」とか思われたら、ヴィヴィ、ふ……っ 憤死しちゃう~~っ!!)

 その後も懸命に抵抗したのだが、あれよあれよという間に兄に組み敷かれ。

 レースのカーテンしか引かれていないリビングのソファーで、ヴィヴィは隅々まで愛されてしまった。

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