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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第110章
ヴィヴィには夢があって。
それは儚くて、まだぼんやりとしていて、現実味を持っていなくて。
けれど今の自分は、その夢に向かって苦心して大学に進学し。
必死に勉強をし、兄の同伴として社交術も育みつつある。
(う~~ん……。外交官しつつ、振付もして……。たまに、アイスショーに出て……って、無理かなあ?)
そんな前代未聞の将来を夢想したヴィヴィ。
「……ま……、無我夢中に頑張ってたら、何とかなるでしょ!」
そう、楽観的な(今の時点での)結論に辿り着いたヴィヴィは、クリスと一緒に福岡から帰還したのだった。
そして、現実はもっと厳しい。
福岡から帰宅した翌日の7月11日(月)から、東京大学では学期末試験がスタートした。
目指すは80点~100点/100点中の “優” の評価。
(ううん。目指すは――じゃなくて、絶対にクリアしなきゃ!)
19個ある試験。
その初日。
初っ端から4教科の試験を終え、脳味噌を使い果たして帰宅したヴィヴィに、匠海は言った。
「1週間後、見合いするからね」
その “報告” に、ヴィヴィが許されている返事は「はい」だけだ。
前半の1週間で、12個/19個中の試験を終えた双子。
残るは7個と思うと、張り詰めていた気持ちも少し和らいで。
週末はいつも以上に、早朝からディナー前までを、氷上レッスンとジムでの体幹トレーニング等に費やした。