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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第110章          

 ディナー前に帰宅した双子は、さっとシャワーを浴び、父と食事を取り。

 その後はずっと、私室の書斎で試験勉強に励んだ。

 23時前には就寝支度を終えたヴィヴィは、早々にベッドに潜り込んだ。

 明日から7科目の試験が続く。

 身体も頭もフル稼働で疲労困憊のヴィヴィの意識は、すぐにまどろんで行く。

 まだ、毎日の日課である、匠海の添い寝がなされていないのに。

 その兄の帰宅を確認していないのに。

 人間どうやっても、猛烈な睡魔には逆らえないらしい。

 しかし、その1時間後――。 

 ベッドの上で躰を起こしたヴィヴィは、匠海と対峙していた。

「………………」

(お兄ちゃんが来ることは、予想、してた……)

 何故ならば、今日は見合いの日だったから。

 正確に言えば、日付が変わったので、昨日がその日だったから。

 1度目の見合いの日――ヴィヴィは真行寺家に泊まったので、無かったが。

 2度目の見合いの日から、帰宅した匠海は、何故かヴィヴィを激しく抱いてくる。

 今回は、2日前の土曜日にセックスしたばかりだから、無いかもとは思ったが。

 寝室の戸口に佇んだままの匠海。

 バスローブから伸びたその手には、赤色のカードが1枚握られていた。

「……お兄、ちゃん……?」

 自分を何度も呼んで起こした癖に、その後 何も発しないし近寄っても来ない兄。

 静かにその名を呼べば、やっと匠海はこちらへと近付いて。

 そして掌の中の物を、ヴィヴィへと差し出してきた。



“ このカードを手にした人は

  篠宮 ヴィクトリアに 

  何でもワガママを言う事が出来ます
 
  制限時間 : 1時間
 
  有効期限 : 一生

  但し、譲渡不可 ”


 
 読まなくても勿論、内容は解っている。

 自分で作って兄に渡したのだから。

 そして、そのカードの真ん中には、出来損ないのパンダが馬鹿みたいに、

『精一杯 お世話します!』

と、ほざいていることも――。

「俺のワガママ……、訊いてくれるか?」

 そう静かな声で囁いてくる匠海は、何だか弱々しく見えて。

「ん。なあに?」

 微笑みと共にそう促せば、想像通りの答えが降ってきた。

「ヴィクトリアを1時間、抱きたい」

「分かった」

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