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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第110章
「明日、午後の1個だけだから」
首筋でそう囁けば、吐息がくすぐったかったのか、匠海の広い肩がぴくりと戦慄く。
「ん?」
「試験……。だから、もっと……」
妹のその言葉に、突っ伏していた匠海が、のっそりと顔を上げる。
「もっと?」
自分を覗き込んでくる美しい瞳には、既に期待が滲んでいるのに。
その先をヴィヴィに言わそうとしてくるところが、本当にずるい。
「もっと、2人で、気持ち良く……なろう?」
ちゃんと言葉にして続きを乞うたヴィヴィは、両腕でぎゅうと兄を抱き締め。
そして、絡ませていた両脚にも力を籠め、自分を穿つ昂ぶりを更に奥へ――最奥へと導いた。
「……――っ ヴィクトリアっ」
こつりとまだ青いそこを小突いた兄は、しばらくその先っぽにあたる感触を味わっていたが。
やがて、妹の抱擁を解くと、白い乳房を愛しながら、腰を振り始めた。
「あんっ あ……、ぁあっ はぁあん……っ」
甘い吐息と、媚びた嬌声を上げながら、
再び自分に堕ちてくる兄と、
瞳を細めて淫蕩に耽るだけ。
それが一番気持ち良くて、
一番求められていることで、
一番 楽――だから。
(世の中には、考えても仕方の無いこと……ある、と思う……)
見合いの日の夜は匠海の匂いを嗅ぎ、
女の匂いが残っていないかを確認し。
激しく求め合うその日の夜の行為に興奮したり、なんかして。
少しずつ、慣らされている様な気も、しなくもない。
微量の毒を、幾度にも分けて盛られ、
口移しで含まされ、
素直に嚥下するその愚鈍さを、嘲笑われている気さえする。
それでいい。
きっとそれでいいのだろう。
兄がそれを求めるならば。
必要なのかもしれない――痛みに耐性を付けることが。
これから先に待ち受けているであろう、予想も付かない様々な事柄に、
心乱されず立ち向かえるように。
もしかしたらそれが、
“大人になる” ということなのかも知れない――。