この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第110章
結局、全身に化粧水を塗りたくられたヴィヴィは、恨めしそうに兄を見上げた。
「お兄ちゃんは、嘘吐き――なんだもんっ」
「俺が?」
心外とばかりに聞き返してくる匠海に、ヴィヴィはぷいと顔を背けて零す。
「………………んない、もん」
「え?」
妹の呟きが聞こえなかったのか。
そう短く聞き直した兄に、ヴィヴィは声を押し殺しながらも叫んだ。
「全然、ぜんぜん、おっきくならないんだもん!」
「は? 何が?」
こんなに言っても解らないのか、首を捻る匠海。
「……~~っ!? む、お胸っ 「毎日揉んで大きくしてあげる」って言ったのにぃ~~っ」
半泣きで兄を睨み上げるヴィヴィに対し、匠海はその可愛らしい顔から視線を移し、
「あ~~……」
そう、しみじみ唸った。
「……っ!? 今、「確かに」って思った!」
(ひ、酷いっ)
「…………ごめん」
そう素直に謝罪してきた兄に、ヴィヴィは「あ、謝らないでぇ~~っ」と悲壮感を漂わせたのだった。
――検証結果――
2年近く、毎日大好きな男に胸を揉まれても、駄目なものは駄目です。
by 篠宮 ヴィクトリア
兄と就寝挨拶を交わし、とっとと寝ようと目蓋を閉じたヴィヴィだった。
が、その2時間後――尿意をもよおして目が覚めてしまった。
「………………」
(…………ローズヒップ……か……)
明日からの強行スケジュールに備え、就寝前に “ビタミンCの爆弾” と呼ばれるそれを飲んだのだが。
利尿作用のあるハーブの効能を侮っていた。
しぶしぶベッドから降りたヴィヴィは、寝室を出てバスルームへと向かう。
当初の目的を達し、海水魚の寝る姿でも堪能するかと、暗闇の落ちたリビングへ出ようとし。
ルームシューズに包まれた爪先が、ぴたりと止まる。
微かに聞こえた物音に、ヴィヴィはふっと視線をやる。
そちらは左隣の匠海の部屋。
「………………?」
首を捻りながら白石のマントルピースを見やるが、当たり前だが暗くて、その上に置かれた時計は見えない。
だいたい3時前くらいだろうか。
そう見当を付けながら、踝から下しか見えていない脚をそちらへ向ける。