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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第29章                              


 なんと言葉を掛けていいのか分からなかった。常識的に考えて、グランプリファイナルでも全日本でも表彰台に昇ったヴィヴィと村下のオリンピック行きは確定――。そして今回3位になった宮平は本田よりも世界ランキングが上――つまり宮平が代表に選ばれるのはほぼ明確だった。

 本田をはじめ他の選手だってオリンピックの切符を手にしたいと思って今日まで何年もの間、頑張ってきたのだ。

「佳菜子、ヴィヴィ。来て」

 スケ連の人が二人を呼びに来て、ヴィヴィと村下は席を立つ。村下が本田の後ろを通るとき、そっとその肩に優しく触れた。きっと気づいたのは村下の真後ろにいたヴィヴィと、触れられた本田本人だけだったと思う。

(……皆の分も頑張る……月並みだけれどもそれしか、私に出来ることはきっと、ない……)

 ヴィヴィは心の中でそう決意すると、気持ちを切り替えてスケート連盟の幹部と関係者が集められた控室へと足を踏み入れた。



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